もし、「もう一人の自分」がいて、迷ったときにいつでも相談に乗ってくれるとしたら——。ちょっとSFっぽく聞こえるかもしれませんが、じつは今、それに近いものが自分の手で作れてしまいます。
カウンセリング、コーチング、内省。どれも「やったほうがいい」と分かっていても、ハードルが高い。お金も時間もかかるし、そもそも自分の頭の中を、他人にうまく言葉で説明できる人なんて、そういません。
でも最近、僕はある仕組みを作って、この問題がかなり解けた実感があります。AIに、自分の頭の中をまるごとデータベース化してもらう。そうやって「自分の分身」を少しずつ育てていく、という試みです。今日はその設計図を、包み隠さず公開します。
先に言っておくと、これは手順書ではありません。ツールの使い方は環境ですぐ変わるし、陳腐化するので。伝えたいのは、その奥にある「考え方」=設計思想のほうです。
そもそも、いちばんのコーチは「自分」なはず
自分のことをいちばん知っているのは、自分です。だとすれば、最高のコーチも本来は自分のはず。問題は、自分を客観的に取り出せないことにあります。頭の中の価値観や判断基準は、なんとなく在るけれど、言語化されていない。だから、いざ迷ったときに「自分ならどう考えるか」を自分に問い直せない。
ここをAIに手伝ってもらう。自分の思考を、AIが問いを投げて引き出し、構造化して溜めていく。すると、自分の価値観が”外部化”されて、いつでも参照できるコーチになる。これが、この仕組みの狙いです。
仕組みの全体像
流れはとてもシンプルです。
使っている道具:Claude Code × Notion を「MCP」でつなぐ
役割分担はこうです。
- Claude Code(AIエージェント)=「聞き手」。自分に投げる問いを考え、答えに対して深掘りし、話の中から”思考の粒”を抽出します。
- Notion(データベース)=「記憶」。問いを貯める場所と、抽出した思考を貯める場所の2つを持ちます。
この2つをつないでいるのが MCP(Model Context Protocol)です。ざっくり言うと、AIが外部のツールを直接読み書きするための共通規格。これがあることで、Claude Code は「Notionのこのデータベースを見て、ここに書き込んで」という操作を、人間の手を介さずに実行できます。ここが、この仕組みのいちばんの肝です。AIが”考える”だけでなく、”記憶を自分で管理できる”ようになる。
2つのデータベースの設計
Notion側には、データベースを2つ用意しています。真似したい人のために、構造をそのまま公開します。
① 種DB(問いの置き場)
AIが自分に投げる「問い」を貯めておく場所。主なプロパティは——問い(何を聞くか)/ゾーン(お金・仕事・暮らしなどの分類)/ステータス(未回答・回答済)/深掘り(どの問いから枝分かれしたか)。AIはここから未回答の問いを選んで投げ、答えを受け取ります。
② 人格DB(思考の蓄積)
答えから抽出した”思考の粒”を貯める場所。プロパティは——要約(一文に圧縮した思考)/カテゴリ(仕事観・人生観・お金観など)/本人の言葉(実際の言い回しをそのまま)/確度(どれだけ確信が持てるか)。ここが増えていくほど、「自分の分身」の解像度が上がっていきます。
問い→回答→蓄積を、実際のレコードで見せます
言葉だけだとイメージしづらいので、僕の頭の中で実際に起きている「一本のつながり」を、そのまま出します。まず、AIからこんな問いが飛んできます。
【問い(マシュマロ)】AIに“あえて任せない”と決めてることは?
これに、音声でこう答える。滑舌や変換の粗さは、そのままでかまいません。
【音声での回答】「AIに任せないようにしてるのは、0→1と0→0.1を作るところ。次のミーティングで何を話そうかっていう着想の部分。ここは絶対に譲らない」
すると、この答えから“思考の粒”が抽出されて、人格DBに残ります。
【蓄積された粒】
要約:AIに絶対に譲らないのは0→0.1の着想部分。表現・資料化はAIを人の1000倍使う / カテゴリ:AI観 / 確度:高
この 「問い → 音声の答え → 構造化された粒」 という一本の流れこそ、この仕組みの心臓部です。これが積み重なると、こんな粒も並んでいきます。
要約:数字が読めるとは、計算が速いことではなく、増減や違和感を大きく掴む感覚のこと / カテゴリ:仕事観 / 確度:高
要約:どんな時間も、無駄にしなければ何かにつながる。この確信が努力の原動力になっている / カテゴリ:価値観 / 確度:高
こうして、なんとなく頭の中に在っただけの価値観が、検索できる・引用できる形で構造化されていく。迷ったとき「自分ならどう考えるんだっけ」を、自分の分身に聞けるようになるわけです。
続けられる仕掛け:日課にする、音声でいい
この仕組み、僕は毎日の日課にしています。続けられているのは、ハードルを徹底的に下げているから。
答えるのは、音声入力です。滑舌や変換ミスで多少荒れても、まったく気にしません。大事なのはきれいに書くことではなく「量を出す」こと。手で書くより、音声なら数十倍の量をアウトプットできる。じつはこの“手段に固執しない”という考え方は、以前に書いたジャーナリングの記事とも地続きです。紙に書くことに縛られて続かなくなるより、音声でざっと出すほうが、結局はるかに続く。
AIを“下書き役”や“検索役”として使う人は多いけれど、僕はもう一歩進めて、AIをベースにした新しい習慣そのものを作っている感覚があります。毎日ちょっと、音声で問いに答えるだけ。それだけで、自分の分身が静かに育っていく。歯磨きみたいに、生活の一部になっています。
あえて「手順書」にはしません
ここまで読むと「で、具体的な設定手順は?」と思うかもしれません。でも、そこはあえて書きません。ツールのUIや設定方法は、半年もすれば変わってしまう。手順書は、書いた瞬間から陳腐化していくものだからです。
大事なのは手順ではなく、「AIが問いを投げ→自分が答え→思考を構造化して蓄積する」というループそのものの設計思想。この骨格さえ掴んでいれば、道具が何であっても、自分なりの”分身”を育てられます。
これは、ちょっとした革命だと思う
今まで、自分を深く掘り下げる作業は、専門家の手を借りるか、強い意志で一人でやり切るしかありませんでした。ハードルが高くて、続かない。
でもこの仕組みなら、やることは「音声で問いに答える」だけ。誰でも、自分だけのコーチ=自分の分身を持てる。しかも、答えれば答えるほど賢くなっていく。自分を客観視する装置を、一人ひとりが持てる時代になった——僕はこれを、静かな革命だと思っています。
粒が10個、100個、1000個と増えていったら、どうなるか。ちょっと想像してみてください。何かを決めるとき、「自分ならこう考える」を、育てた分身が先回りで返してくれる。数年前の自分と対話できるし、ブレそうなときは軸を思い出させてくれる。育てれば育てるほど、それは“もう一人の自分”に近づいていく。——正直に言うと、これがどこまで行くのか、作っている僕自身がいちばんワクワクしています。
設計図は、この記事にぜんぶ置きました。あとは、あなたの頭の中を、少しずつ預けてみるだけです。
※本記事は執筆時点の情報にもとづく、個人的な取り組みの紹介です。使用ツールの仕様は変わることがあります。実際の設定・運用はご自身の環境と判断でお願いします。
note には、仕事やキャリアの考えごとを書いています
公認会計士・税理士として実務で見ていること、キャリアで迷ったこと、お金との距離感。答えの出ていない話も含めて置いています。

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