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暦年贈与vs相続時精算課税2026|どちらを選ぶ?親の年齢×資産で最適判定

2026 10/04
FP・ライフプラン
2026年5月23日2026年10月4日

年末が近づくと、「今年の110万円、どうしよう」という話が出てきます。2024年の改正以降は、そこに「もう暦年贈与より相続時精算課税のほうがいいらしい」という空気も混ざるようになりました。

まず、よこまる本人の見解から。この空気について聞くと、返ってきたのは「それはぜんぜん違う制度だよ」という一言でした。どちらも毎年110万円までは非課税で渡せるので、同じ制度の新旧のように見えます。でも、暦年贈与はその年ごとの贈与として課税を済ませていく仕組み(相続前7年以内の分は持ち戻し)で、相続時精算課税は2,500万円までの贈与を「相続の前払い」として、最後に相続財産と合わせて精算する仕組みです。性格が違うので、「どっちが得か」の前に、何をしたいのかで選ぶものです。

この記事では、2024年改正で変わった2つのルールを並べたうえで、親の年齢と資産規模からどちらを使うかを整理します。

よこまる

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「精算課税のほうが得」は、制度の性格を見ていない話です。
目次

2024年改正で変わった贈与税の2大ルール

日本の岡崎で川のそばにある桜の下に集まる家族。
Photo by Huu Huynh on Pexels

まず押さえておきたいのは、改正で動いた論点が「暦年贈与」と「相続時精算課税」の両方にあるという点です。片方だけ見て判断すると、もう片方の改正でかえって損をするケースがあります。

暦年贈与の持戻し「3年→7年」化

暦年贈与は、毎年110万円までなら贈与税ゼロで子や孫に資産を移せる王道の制度です。ただし、贈与した人が亡くなった場合、亡くなる前の一定期間にした贈与は「なかったこと」にされ、相続財産に持ち戻して相続税を計算し直すルールがあります。これを生前贈与加算と呼びます。

従来は持戻し期間が「亡くなる前3年分」でしたが、2024年1月1日以降の贈与から段階的に7年分へ延長されました。完全に7年化されるのは2031年1月以降の相続からですが、それまでも経過措置で持戻し期間がじわじわ伸びていきます。延長された4年分(4〜7年前)については合計100万円を控除できる経過措置がありますが、控除しきれない部分は相続財産に加算されます。

相続時精算課税に新設された110万円基礎控除

相続時精算課税は、60歳以上の親(祖父母)から18歳以上の子(孫)への贈与について、累計2,500万円まで贈与税を非課税にして、将来の相続時にまとめて精算する制度です。従来は「一度選ぶと暦年贈与に戻れない」「110万円の基礎控除がない」「少額でも申告が必要」という使いづらさがあり、利用は限定的でした。

2024年改正で、この精算課税にも毎年110万円の基礎控除が新設されました。しかも、この110万円ぶんは将来の相続財産に持ち戻されません。つまり「毎年110万円までなら申告不要・相続時の持戻しもなし」という暦年贈与に近い使い勝手を、累計2,500万円の非課税枠と組み合わせて使えるようになったわけです。

改正後ルール比較表|どちらを選ぶか

条件が複雑なので、まずは両制度の改正後ルールを並べて見てみます。

暦年贈与 vs 相続時精算課税 早見表

項目 暦年贈与 相続時精算課税
年間非課税枠 110万円 110万円(基礎控除・申告不要)
累計の非課税枠 なし(毎年リセット) 2,500万円(一生涯通算)
贈与者の年齢要件 なし 60歳以上
受贈者の年齢要件 なし 18歳以上の推定相続人・孫
相続時の持戻し 亡くなる前7年分(経過措置あり) 2,500万円枠は全額/110万円基礎控除分は持戻しなし
制度の切替 いつでもOK 一度選ぶと暦年贈与に戻れない
申告 110万円超で必要 初回に届出/110万円以下は申告不要

ポイントは2つです。1つ目は、毎年110万円の非課税枠はどちらの制度にもあるということ。2つ目は、相続時精算課税を選ぶと「110万円ぶんは持戻しなし」のメリットを最初から享受できる一方で、暦年贈与に戻れないという縛りがある点です。

「親の年齢×資産規模×子の人数」3パターン判定

判定の軸は、ざっくり次の3パターンです。

パターン 典型例 推奨制度
A:親が60代前半・資産5,000万円超・子複数 父65歳・母62歳/資産6,000万円/子2人 暦年贈与継続(10年以上贈与できる余地あり)
B:親が70代以降・資産5,000万円前後・子1〜2人 父75歳・資産5,000万円/子1人 相続時精算課税に切替(持戻し7年を回避)
C:親が60代後半・資産1億円超・子1人 父68歳・資産1.2億円/子1人 併用(1人は精算課税/別の子は暦年継続)

パターンAのように親がまだ若く、10年以上にわたって毎年贈与できる余地があるなら、暦年贈与を続けても持戻し7年の影響は限定的です。むしろ7年より前の贈与は完全に相続財産から外れていくため、長期勝負で見ると暦年贈与の優位性が残ります。

逆にパターンBのように親がすでに70代以降の場合、暦年贈与で動かしても亡くなるまでに7年経過しない可能性が高く、持戻しでほぼ全額相続財産に戻されてしまいます。相続時精算課税に切り替えれば、毎年110万円ぶんは持戻しなしで確実に外せます。

持戻し対象外の特例と組み合わせる

暦年贈与・精算課税の本筋とは別に、目的を限定した「持戻し対象外の非課税特例」があります。これらを組み合わせると、家族単位で動かせる非課税の総量が大きく変わります。

住宅取得等資金贈与の特例

子や孫が自宅を新築・購入・増改築する資金として親や祖父母から贈与を受ける場合、省エネ住宅で1,000万円、それ以外で500万円まで非課税になる特例があります。2026年12月31日までの贈与が対象で、相続発生時の持戻しの対象にもなりません。共働きで自宅を購入するタイミングと親からの援助が重なる世帯にとっては、最も使い勝手の良い枠です。

教育資金一括贈与の特例

孫の教育費用として、信託銀行などを経由して一括で最大1,500万円まで非課税で贈与できる制度です(うち学校等以外への支払いは500万円まで)。2026年3月末までだった期限が2026年度税制改正で2029年3月末まで延長されました。30歳までに使い切れなかった分には贈与税がかかる、贈与者死亡時に残高がある場合は相続税の対象になるなど制約はありますが、孫が幼いうちにまとめて移したい家庭には有効です。

年代別シミュレーション|家族で最大いくら動かせるか

父70歳・母68歳・子2人(30代)・孫2人(10歳・8歳)という家族構成で、5年間に動かせる非課税枠の概算を試算してみます。

  • 父→子2人へ毎年110万円ずつ:110万円×2人×5年=1,100万円(精算課税基礎控除を活用)
  • 母→子2人へ毎年110万円ずつ:110万円×2人×5年=1,100万円(暦年贈与)
  • 父→孫2人へ教育資金一括贈与:1,500万円×2人=3,000万円
  • 父→子の一方へ住宅取得資金贈与(省エネ住宅):1,000万円

合計で約6,200万円を非課税ベースで家族に移せる計算です。もちろん全ての家庭で使える枠ではありませんが、「110万円×複数年」だけで考えると見えてこない設計の幅があります。

申告漏れリスクの落とし穴

子供たちが祖母と一緒に木のブロックで遊んでいる、居心地の良いリビングルームの設定。
Photo by Alex Green on Pexels

制度を使いこなしても、形式が整っていなければ税務署に「贈与とは認められない」と判断され、後から相続財産として課税されることがあります。特に注意したいのが2点です。

贈与契約書の整え方

「毎年110万円を子の口座に振り込んでいた」だけでは贈与の事実を証明しづらく、税務調査で否認されるリスクがあります。1回ごとに贈与契約書を作成し、贈与者と受贈者の署名・押印・日付を残しておくことが基本です。契約書は印紙不要(110万円程度の現金贈与では)ですが、両者の手元に1部ずつ保管しておきます。

毎年同じ金額を同じ日に贈与し続けると「定期贈与(最初から数年分の贈与を約束していた)」とみなされ、初年に総額の贈与税を課されるリスクがあります。金額や時期に変化を持たせる、契約書を毎年作り直すといった工夫が必要です。

名義預金とみなされないコツ

親が子名義の口座を作り、勝手にお金を振り込んでいるだけだと「実質的には親の財産」と判定され、相続時に名義預金として相続財産に加算されます。これを避けるには、口座の通帳・印鑑・キャッシュカードを受贈者本人が管理し、本人が日常的に出し入れしている実態を作ることが大切です。未成年の子の口座であっても、親権者が管理しつつ「将来の本人のためのお金である」記録が残るように整えます。

2026年の判断フロー|親の年齢から決める

ここまでを踏まえ、判断の順番を整理します。

  1. 親の年齢を確認:60代前半なら暦年贈与継続が基本。70代以降なら精算課税切替を検討
  2. 資産規模を概算:相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)を上回るかチェック
  3. 子の人数で枠を最大化:贈与者2人×受贈者2人なら年440万円の非課税枠
  4. 住宅・教育などの特例を重ねる:持戻し対象外の枠を最優先で使う
  5. 贈与契約書と名義預金対策をセットで:形式不備で否認されないよう書面と実態を整える

関連する内部制度として、相続発生後の不動産売却節税については不動産の相続節税5年ルール2027年導入|駆け込み購入が無効化される対策タイミング、世帯の住民税最適化については住民税が0円になる給与収入は165万円まで!2026年110万円改正で世帯がいくら得するかも合わせて読むと、家計全体の節税設計が立体的になります。

記事のまとめ

父と娘が晴れた秋の日に風景の美しい公園で自転車を楽しんでいます。
Photo by Tris Truong on Pexels

2024年改正後の贈与税は、「暦年贈与のままで7年持戻しを受け入れるか」「相続時精算課税に切り替えて110万円ぶんを確実に外すか」の2択を、親の年齢と資産規模で判断する世界に変わりました。改正は確かに増税方向ですが、新設された精算課税の110万円基礎控除や、持戻し対象外の住宅・教育特例を組み合わせれば、家族で動かせる非課税の総量はむしろ広がる場面もあります。

大切なのは、110万円×複数年という単純計算で止まらず、親の年齢・資産規模・子の人数・特例の組み合わせまで含めて設計することです。

そのうえで、よこまるはもう一段手前を見ています。「そもそも渡すのに税金がかかる人は本当に少数で、みんなそれを意外と知らない」。相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える財産がなければ、贈与の制度選びで悩む必要自体がありません。超えているなら、それはそこまで財産を築けたということで、まず素直に喜んでいい。そして「ちまちま節税するより、相続財産を増やしたほうがいい」というのがよこまるの考え方です。

今年の110万円を動かすかどうか迷っている人への一言は、はっきりしています。「迷うな、さっさとやろう」。そのうえで、生命保険など基本的な相続対策がひととおり済んでいるかを確認する。何を言われているのかわからない状態なら、ひとりで制度を読み込むより、今すぐ信頼できる税理士を見つけて任せる。考える時間は節税より、稼ぐほうに回しましょう。

よこまる

よこまる

迷うより、さっさと動く。わからなければ税理士に任せましょう。

※ 本記事は執筆時点の税制・制度をもとに作成しています。改正や個別事情で結論は変わります。実際の贈与・相続設計は税理士・FP等の専門家と最新情報を確認のうえ判断してください。

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公認会計士・税理士。IPO準備企業で、経営に近い場所にいます。仕事は数字を扱うことですが、いちばん興味があるのは「人がどう働いて、どう暮らすか」。お金・税務・AI・キャリア、そして日々のことを、一般論として、自分の頭で考えた分だけ書いています。ここに書いているのは、個人としての見解です。
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