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金利1%時代、繰上返済しないという判断は変わるのか

2026 9/12
FP・ライフプラン
2026年8月30日2026年9月12日

「金利が上がってきたので、そろそろ繰上返済したほうがいいですか」という質問をよくもらいます。ただ、僕はこの問いの立て方そのものに引っかかっています。住宅資金という性質のお金を変動金利で借りるという発想が、そもそも自分にはないからです。だから「変動が何%になったら繰上返済に反転するか」と聞かれても、答えようがないというのが正直なところ。

とはいえ、すでに変動で組んでいる人はたくさんいます。政策金利が1.0%まで上がった2026年の夏、その人たちが本当に整理すべきことは何なのか。制度と数字は正確に、そのうえで僕自身の見解も最後に書きます。

目次

2026年夏、住宅ローンの前提はすでに動いている

まず、いま自分がどういう環境に置かれているかを正確に把握するところから。ここが曖昧なまま「上がったらしい」という空気だけで動くと、判断を間違えます。

政策金利1.0%、フラット35は3.29%

日本銀行は2026年6月15〜16日の金融政策決定会合で、政策金利の誘導目標を0.75%程度から1.0%程度へ引き上げることを決定しました。1.0%という水準は1995年以来、約31年ぶりの高さです。続く7月の会合では1.0%程度で据え置かれています。

長期金利の影響を受ける全期間固定型では、フラット35の金利が2026年8月に3.29%と、現行制度で最高水準に達しました。数年前の「1%台の全期間固定」を知っている人からすると、まったく別の商品に見える水準です。

変動金利の「本番」は10月から

変動金利は、政策金利が上がってもその日から跳ね上がるわけではありません。多くの銀行は短期プライムレートに連動させ、年2回(4月・10月)の基準日で適用金利を見直します。このため6月の利上げが変動金利に反映されるのは、大半の銀行で10月という見方が一般的です。

ただし全行が横並びではなく、PayPay銀行は7月、ドコモ SMTBネット銀行は8月にすでに引き上げを実施しています。9月に前倒しする銀行が出る可能性もあります。市場では10月または12月の追加利上げが意識されており、その先には年内1.25%という水準も視野に入っています。

よこまる
「まだ上がってない」ではなく「反映が遅れているだけ」。ここを取り違えないことです。

問いは「何%で繰上返済か」ではない

ここからが僕の見解です。金利が上がってきた局面で真っ先に「繰上返済すべきか」を考える人が多いのですが、その順番が違うと思っています。

住宅資金を変動で借りるという発想がない

僕はこれまで「住宅ローンは金利が低くて団信まで付いたスペシャルな金融商品で、繰上返済で手放す理由がない」と言ってきました。その持論はいまも変えていません。ただし、その前提には「金利が動かない借り方をしている」という条件が最初から入っています。

数十年にわたって返し続ける、しかも住まいという生活の土台に紐づいたお金。その性質のものを、将来の水準が誰にも読めない変動金利で借りるという選択が、自分の中には最初からありません。固定以外を選ぶという発想がないので、「変動が何%になったら」という問いに対しては、そもそも土俵に立っていないというのが正直な答えです。

これは「変動を選んだ人は間違い」と断じたいわけではありません。実際、変動と固定の金利差は長く大きく開いていて、その差を取りにいく判断には合理性がありました。ただ、その合理性は「金利が上がらなければ」という前提つきの合理性だった、というだけの話です。

振り返るべきは金利ではなく、あのときの意思決定

いま変動で組んでいて繰上返済を考えている人に、僕が本当に勧めたいのはこちらです。繰上返済の是非を考える前に、自分があのとき何を根拠に多額の借金の条件を決めたのかを、一度きちんと振り返ること。

営業担当に勧められたから。周りもみんな変動だったから。返済額のシミュレーションが安く見えたから。理由が何であれ、それを直視することには意味があります。結果が出たあとに振り返ると、その結果につながっていた判断とつながっていなかった判断は、驚くほどはっきり分かれるものです。それが見えるようになると、繰上返済をどうするかという目の前の問いにも、自然と自分なりの答えが出てきます。

逆に、そこを飛ばして「金利が上がったから繰り上げる」だけで動くと、同じ意思決定の癖のまま次の大きな判断もしてしまう。住宅ローンは人生で最大級の金額を動かす取引です。ここで一度立ち止まって考えたことは、この先ずっと効いてきます。

よこまる
繰上返済より先に、あのときの判断根拠を洗い出したほうが効きます。

変動の見えにくいリスク——返済額は同じ、元本だけ減らなくなる

変動金利の怖さは、金額の跳ね上がりではありません。金額が変わらないまま、中身だけが静かに悪化していくところにあります。

5年ルールと125%ルールが守っているもの

多くの銀行の変動金利には、次の2つのルールが付いています。

  • 5年ルール:金利が見直されても、毎月の返済額は原則5年間据え置かれる
  • 125%ルール:5年経過後に返済額が上がるときも、直前の返済額の125%が上限

一見すると手厚い保護に見えます。ただ、この2つが守っているのは「毎月の返済額」だけです。利息の計算そのものには、新しい金利が見直しのタイミングから即座に適用されます。総返済額を守ってくれる仕組みではない、という点は必ず押さえてください。

なお、ネット銀行などの一部にはこのルールを採用せず、半年ごとの金利見直しをそのまま返済額に反映させる金融機関もあります。自分の借入がどちらなのかは、金銭消費貸借契約書で必ず確認しておきたいところです。

返済額77,878円の「中身」が金利でどう変わるか

言葉で説明されてもピンと来ないので、数字にしてみます。借入3,000万円・35年・元利均等・当初金利0.5%で組んだ場合、毎月の返済額は約77,878円。この返済額が据え置かれたまま金利だけが上がったとき、返済額の内訳がどうなるかが下の表です(借入直後の残高3,000万円時点で、金利だけが変わったと仮定した単純化した試算です)。

適用金利 毎月の返済額 うち利息 うち元本
0.5%(当初) 77,878円 12,500円 65,378円
1.0% 77,878円 25,000円 52,878円
1.5% 77,878円 37,500円 40,378円
2.0% 77,878円 50,000円 27,878円
2.5% 77,878円 62,500円 15,378円
3.0% 77,878円 75,000円 2,878円

毎月払っている金額は1円も変わりません。それでも、金利が0.5%から1.5%になっただけで、元本の減りは月65,378円から40,378円へ約4割減。2.0%なら6割近く減ります。通帳を見ているだけでは、この変化はまったく見えません。「返済額が変わっていないから大丈夫」という感覚が一番危ないのは、このためです。

未払利息が出るライン

この例では、金利が約3.12%を超えると、毎月の返済額77,878円ではその月の利息すら払いきれなくなります。足りない分は「未払利息」として扱われ、返しているつもりが残高が減らない、あるいは増える状態になります。フラット35が3.29%という2026年8月の水準を思うと、この数字は決して非現実的な遠い話ではありません。

もちろん、実際には返済が進むほど残高が減るので、未払利息が生じるまでには相応の金利上昇が必要です。ただ「絶対に起きない仕組み上の安全装置」ではなく、「金利がここを超えたら発動する条件つきの猶予」にすぎない、という理解が正確です。

よこまる
5年ルールは免除ではなく先送り。猶予を安心と読み替えないことです。

すでに変動で組んでいる人が、いま整理しておくこと

ここからは実務の話です。過去の選択は変えられないので、いまの条件で何を見るべきかを整理します。

判断軸は「実質の負担金利」で見る

繰上返済は、確実に「ローン金利と同じ利回り」を得るのと同じ効果があります。だから比較すべき相手は、預金金利ではなく自分が取れる運用の期待利回りです。そのうえで見落とされがちなのが、住宅ローン控除の存在。控除期間中は年末残高の0.7%が税額から差し引かれるので、その分だけ実質の負担金利が下がります。

適用金利 控除期間中の実質負担(▲0.7%) 控除終了後の負担
0.4% ▲0.3%(逆ざや) 0.4%
0.7% 0.0% 0.7%
1.0% 0.3% 1.0%
1.5% 0.8% 1.5%
2.0% 1.3% 2.0%
2.5% 1.8% 2.5%

控除率は0.7%、控除期間は新築の省エネ基準適合住宅で最長13年、中古住宅などは最長10年です。住宅の性能に応じた借入限度額の上限や、そもそも納めている所得税・住民税の範囲内でしか控除されないという制約があります。年末残高が限度額を超えている人や、納税額が小さい人は、この▲0.7%をそのまま当てはめられない点に注意してください。この表は特定の商品や行動を勧めるものではなく、判断の起点を揃えるための整理です。

そのうえで僕自身は、繰上返済に回せるお金があるなら、まず非課税の枠を使い切るほうが先だと考えてきました。NISAのつみたて投資枠が月10万円、iDeCoは2026年12月拠出分から会社員・公務員の上限が月6.2万円へ引き上げられます(企業型確定拠出年金との合計での上限)。合わせて月16万円強の非課税・所得控除の枠を満額使ってから、それでも余るなら繰上返済を考える、という順番です。非課税枠がまだ空いているなら、そちらの手当てが先(PR)というのが、金利が上がったいまも変わらない優先順位です。

ただしこれは、10年20年の単位で放っておける対象に、そう思える気持ちで投資できる人の話です。値動きが気になって続けられないなら、その運用の期待利回りは絵に描いた餅でしかありません。そこは正直に自己申告すべきところ。

繰上返済で失うものを数えてから決める

繰上返済は「利息が減る」という効果だけで語られがちですが、同時に手放すものがあります。

  • 団信の保障:残債が減るということは、万一のときにチャラになる金額が減るということ。掛け捨ての生命保険を自分から解約しているのに近い側面があります
  • 住宅ローン控除:年末残高が減れば控除額も減ります。さらに繰上返済で返済期間が10年未満になると、控除の要件そのものを外れます。期間短縮型を選ぶときは要注意です
  • 手元のキャッシュ:一度ローンに突っ込んだお金は、原則もう引き出せません

最後のキャッシュが、僕は一番大きいと思っています。キャッシュがあるから選択肢が持てるし、やりたいことができる。転職も、住み替えも、家族に何かあったときの対応も、全部キャッシュが担保しています。金利が1%上がったことへの不安を打ち消すために手元資金を薄くするのは、リスクを減らしているようで別のリスクを増やす取引になりかねません。

先に見るべきは、借り換えと固定への切り替え

変動金利の上昇が不安なら、繰上返済より先に検討すべきは借り換え、あるいは固定への切り替えです。上がっていく金利に一括で対処する手段が繰上返済、金利が動くこと自体をやめる手段が固定化。不安の正体が「返済総額」なのか「先が読めないこと」なのかで、打つ手はまったく変わります。

ただし2026年8月時点では固定金利もすでに高い水準にあり、いま切り替えれば当面の返済額は確実に増えます。それでも読めなさを消す価値があるかどうか。ここは各家庭の収入の安定度と、その不確実性にどこまで耐えられるかで判断が分かれるところです。

まとめ:数字より先に、決め方を見直す

金利が上がっても、繰上返済に対する僕の立ち位置は基本的に変わっていません。ただそれは「住宅資金は金利が動かない形で借りる」という前提の上に立った話で、変動で借りている人にそのまま当てはまるものではない、というのが今回いちばん伝えたかったことです。

やることは3つ。自分の借入がどのルールで動いているかを契約書で確認すること。返済額ではなく元本の減り方で状況を測ること。そして、あのとき何を根拠にこの条件を選んだのかを一度振り返ること。3つめは金利とは関係ない作業に見えますが、この先の大きな判断にいちばん効いてきます。

※本記事は執筆時点の情報にもとづきます。税制・制度は変わることがあるので、最新は国税庁等の公式情報でご確認ください。一般的な情報提供であり、個別の税務相談ではありません。

ここまで読んでくれて、ありがとうございます。ふだん何を考えているかは、note に書いています。
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公認会計士・税理士として実務で見ていること、キャリアで迷ったこと、お金との距離感。答えの出ていない話も含めて置いています。

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公認会計士・税理士。IPO準備企業で、経営に近い場所にいます。仕事は数字を扱うことですが、いちばん興味があるのは「人がどう働いて、どう暮らすか」。お金・税務・AI・キャリア、そして日々のことを、一般論として、自分の頭で考えた分だけ書いています。ここに書いているのは、個人としての見解です。
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