2026年のお盆帰省は、8月13日(木)〜16日(日)の4連休が中心。実家に3日いる想定で「親と一緒に相続対策を前に進める」計画を立てておくと、この期間の価値が一段上がります。
僕は、相続の準備は「親が元気なうちに始める」ことを軸に据えています。だからこそ、年に数回しか顔を合わせない世帯にとって、お盆はいちばん動きやすいタイミング。この記事では、帰省3日でできる資産棚卸し・生前贈与の制度整理・遺言書スケッチまでの段取りを、税理士&FP視点で1本にまとめました。
なぜ「お盆帰省の3日」で始めるべきか
顔を合わせて話せる、年に数回のタイミング
相続の準備は、電話やLINEでは進めにくいテーマです。通帳・保険証券・不動産の権利証など、実物を見ながらでないと確認できない情報が多く、家族関係のデリケートな話も含まれるため、対面が向いています。お盆・年末年始・GWの3回が、遠方の子世代にとって現実的な機会になります。
特にお盆は、実家に数日滞在できるスケジュールを組みやすく、兄弟姉妹も帰省が重なりやすい時期。一気にたたき台を作るには相性が良いタイミングです。逆に、この機会に着手しないと、次のGW(2027年)まで9か月ほど空いてしまう家庭が多いのが実情です。
3日で目指すゴールを最初に決めておく
帰省3日で完璧を目指すと消化不良に終わります。僕が提案するのは、次の「たたき台3点セット」を作ることです。
- 親の資産棚卸しシート(1枚のA4)
- 制度メニューの整理メモ(暦年贈与・相続時精算課税・生命保険非課税枠など)
- 遺言書の下書きスケッチ(清書は後日でOK)
この3点があれば、その後の士業相談や兄弟姉妹との情報共有が一気に進みます。「完成させる」ではなく「たたき台を作る」を合言葉にすると、親も身構えずに協力してくれる家庭が多い印象です。
【1日目】親の資産棚卸しと家族関係図
5カテゴリで資産を1枚シートに書き出す
初日は「見える化」に徹します。親の資産を次の5カテゴリに分けて、A4用紙1枚にざっくり書き出すだけで、相続対策の解像度が一気に上がります。
| カテゴリ | 確認したい書類 | メモしたい情報 |
|---|---|---|
| 預貯金 | 通帳・キャッシュカード | 金融機関・支店・残高の概算 |
| 不動産 | 固定資産税納税通知書・登記識別情報 | 所在地・面積・課税評価額 |
| 保険 | 生命保険証券・年金保険証券 | 契約者・被保険者・受取人・保険金額 |
| 証券 | 証券会社の取引残高報告書 | 銘柄・時価概算・NISA有無 |
| 借入 | 住宅ローン残高証明書・借用書 | 借入先・残高・返済期限 |
ここで大事なのは、金額を1円単位で正確に書かないこと。「預金3行、合計おおよそ800万円」のような概算で十分です。目的は完璧な財産目録ではなく、家族全体の資産構成をつかむことにあります。
家族関係図で法定相続人を確認する
資産棚卸しと並行して、家族関係図(相続関係説明図の簡易版)も1枚書いておくと後が楽です。親を中心に、子・孫・兄弟姉妹を線で結び、亡くなっている家族・離婚歴・養子縁組の有無をメモします。
相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人数」で決まります。法定相続人が何人になるかによって課税ラインが変わるため、この時点で概算できるようにしておくのが目的です。相続税の申告が必要かどうかの分岐が、この1枚でざっくり見えます。
【2日目】生前贈与と非課税枠の制度整理
生前贈与3制度と非課税枠を比較する
2日目は制度知識のインプットに使います。親と一緒に一覧を眺めながら「うちに使えそうな枠はどれか」を洗い出しておくと、士業相談の質が変わります。以下は2026年時点の主な非課税制度をまとめた早見表です。
| 制度 | 非課税枠の目安 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 暦年贈与 | 年110万円/受贈者ごと | 長期にわたって少額を移していきたい |
| 相続時精算課税制度 | 年110万円の基礎控除+累計2,500万円 | まとまった金額を早めに渡したい |
| 住宅取得等資金の贈与 | 一定要件で最大1,000万円 | 子世代のマイホーム取得を支援したい |
| 教育資金の一括贈与 | 1,500万円まで(信託契約が必要) | 孫の学費をまとめて負担したい |
| 生命保険の非課税枠 | 500万円×法定相続人数 | 現金を残しつつ相続税を圧縮したい |
制度は年度ごとに要件や期間が更新されるため、金額や期限は必ず国税庁の最新情報で確認してください。うっすらでも制度名を頭に入れておくと、士業からの提案を評価しやすくなります。
不動産の評価軸をつかんでおく
実家不動産がある家庭では、路線価・固定資産税評価額・時価の3つを区別できるようにしておくと会話が進みます。相続税は路線価(または倍率方式)で評価するのが原則で、固定資産税評価額とは金額が異なります。小規模宅地等の特例が使えるかどうかで税額が大きく変わるため、住み方(同居か別居か・賃貸中か)もメモしておくと便利です。
ここは専門知識が必要な領域なので、帰省中に結論を出す必要はありません。「うちの実家は路線価いくらエリアで、面積はこれくらい」というメモがあれば十分で、あとは相続税の試算を税理士に依頼する材料になります。
【3日目】遺言書スケッチと次回帰省へのToDo
自筆証書 vs 公正証書、法務局保管制度の選び方
3日目は遺言書の下書きスケッチに時間を使います。清書は帰省後でよいので、方向性だけ親と決めておくと後の動きが速くなります。主な選択肢は次の3つです。
- 自筆証書遺言(自宅保管):費用ゼロ・親が全文を自書。紛失や偽造リスクが残る
- 自筆証書遺言(法務局保管制度):保管料3,900円で法務局が原本を保管。検認不要になるメリット
- 公正証書遺言:公証人と2名の証人が関与。手数料は数万円〜が目安で、無効になりにくい
資産規模が数千万円を超える家庭や、相続人が複数で意見の食い違いが予想される家庭は、公正証書遺言を軸に検討する価値があります。まずは「誰に何を残したいか」の骨子だけ紙に書き、清書と保管方法は帰省後に司法書士や公証役場と詰めていく順番が現実的です。
兄弟姉妹と情報共有するルールを決める
遺言書と並んで大事なのが、相続人となる家族全員での情報共有です。1人が抱え込むと後々のトラブルにつながりやすいので、帰省中にLINEグループやクラウド共有フォルダを立ち上げておくのがおすすめです。共有するのは次の3点で十分です。
- 資産棚卸しシートの写真(1枚)
- 家族関係図の写真(1枚)
- 次回帰省までのToDoリスト(誰が何をいつまでに)
「兄弟姉妹の間で情報格差をつくらない」がルールの核です。金額の細部よりも「同じ資料を見ている」という状態が信頼関係を守ります。共有クラウドは、写真1枚だけでもGoogleドライブやDropboxで十分機能します。
切り出し方に迷ったときのトーク3パターン
親を身構えさせないための3つの入り口
「相続の話をしよう」といきなり切り出すと、親が構えてしまう家庭は多いです。話題の入り口をずらすだけで、驚くほどスムーズに動き出せることがあります。
- 体調・介護の入り口:「最近、腰の調子どう?介護保険の要介護認定って、書類どこにあるか一緒に確認しておこうか」
- 自分の家計相談の入り口:「うちの住宅ローン組み直し検討してて、教育資金の贈与制度って知ってる?そういえば実家もそろそろ整理しておこうか」
- ニュースの入り口:「テレビで相続時精算課税の改正やってたけど、うちも一度整理しといたほうがいいかもね」
共通するのは「親を主役にしすぎない」こと。子世代が自分の話や第三者の話を軸にすると、親の心理的ハードルが下がります。切り出しが成功すれば、あとは資産棚卸しシートを一緒に見るだけで、自然と会話が進んでいきます。
お盆後に動くべき士業相談タイミング
税理士・司法書士・弁護士の使い分け
帰省で作った3点セット(資産棚卸し・制度メモ・遺言スケッチ)は、そのまま士業相談の材料になります。相談先は目的別に3種類あり、必要に応じて組み合わせて使います。
- 税理士:相続税の試算・生前贈与シミュレーション・小規模宅地等の特例判定
- 司法書士:遺言書の作成支援・不動産の名義変更・法定相続情報一覧図の取得
- 弁護士:遺留分・相続放棄・家族間トラブルの調整
まずは税理士に相続税の試算を依頼し、そのうえで遺言書と名義変更を司法書士に相談する流れが標準的です。家族間で意見が分かれるケースだけ、早めに弁護士も検討します。初回相談は無料枠を設けている事務所も多いので、9月〜10月に予約を入れておくと、次のお正月帰省までに具体案を持ち帰りやすくなります。
まとめ:3日で「たたき台」を作れば、動き出せる
お盆帰省の3日で、資産棚卸し・制度整理・遺言書スケッチのたたき台を作る。この段取りだけで、相続対策はぐっと前に進みます。完璧を目指すのではなく、家族全員で同じ地図を持つ状態をつくることが最初のゴールです。帰省後は士業相談へつなぎ、次回帰省で更新していく——そのサイクルを回せる家庭が、相続を穏やかに乗り越えています。
※ 本記事は2026年7月時点の情報をもとに作成しています。税制・制度は変更される可能性があります。最新情報は国税庁ホームページ等でご確認ください。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談を提供するものではありません。
note には、仕事やキャリアの考えごとを書いています
公認会計士・税理士として実務で見ていること、キャリアで迷ったこと、お金との距離感。答えの出ていない話も含めて置いています。


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