9月に入って、ドル円は約160円から一時154円台まで、6円ほど動きました。毎月オルカンやS&P500を積み立てている人の評価額も、当然その分だけ揺れています。ただ、このテーマを振られたときの僕の答えは「160円が152円になったくらいでは右往左往しなくていい」でした。理由は為替の水準そのものではありません。中長期の相場観を持てているかどうかです。この記事では、為替が評価額をどれだけ動かすのかを数字で分解したうえで、最後に僕自身がどう見ているかを書きます。
2026年9月、為替に何が起きたのか
まず事実から並べます。ここは主観を挟まず、報じられている数字だけで整理します。
約160円から154円台へ、およそ半年ぶりの円高水準
2026年9月上旬、ドル円は約160円の水準から一時154円台まで下落しました。9月上旬には155円を割り込み、およそ半年ぶりの円高水準をつけています。値幅にして6円弱、率にすると4%弱の動きが、2週間ほどで起きたことになります。
今回の円高は、為替介入によるものではないとされています。背景として挙げられているのは金融政策の方向の違いです。日銀の審議委員の発言などを受けて9月利上げ観測が強まった一方、FRBは追加利上げに慎重と見られている。この金利差の縮小観測に、積み上がっていた円売りポジションの巻き戻しが重なった、という整理が一般的です。強い米国指標を受けたドル買いよりも、そちらが上回った形になります。
次の分かれ目は、FOMCと日銀金融政策決定会合
この先の材料もはっきりしています。FOMCは2026年9月15〜16日(結果公表は日本時間17日未明)、日銀金融政策決定会合は9月17〜18日で、結果公表は18日の昼前後、その後15時30分から総裁の記者会見という日程です。二つの中央銀行の判断が、中1日で連続して出てきます。
市場予想としては、目先154〜158円程度のレンジを見る向きが多いようです。ただ、「予想レンジが出ている=その中で動く」という話ではありません。会合の前後は、予想そのものが外れたときに大きく動く局面でもあります。日程はカレンダーに入れておく程度でよく、その日に賭けるための材料ではありません。
積立の評価額は、株価と為替の掛け算で動いている
「今月は下がった」と言うとき、それが株価で下がったのか為替で下がったのかは、分けて見ないと判断を誤ります。
オルカンもS&P500連動も、為替ヘッジは原則なし
前提として、日本で積立の主力になっている全世界株式や米国株式のインデックス投信は、原則として為替ヘッジを行いません。たとえばeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は、MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み・円換算ベース)に連動する成果をめざす商品で、原則として為替ヘッジは行わないと明記されています。投資先の半分以上は米国です。
つまり、日々目にしている基準価額は「現地通貨ベースの株価」と「為替」を掛け合わせた結果です。これは欠陥ではなく設計です。円ベースで暮らす人が外貨建ての資産を持つ以上、為替の影響を受けるのは当たり前で、ヘッジをかければその分コストがかかります。ヘッジがないことを不満に思うより、自分の評価額のうちどこまでが為替なのかを把握しておくほうが実用的です。
株価が±0%でも、為替だけでこれだけ動く
ここを体感に落とすために、株価がまったく動かなかったと仮定して、為替だけで円換算の評価額が何%変わるかを並べます。ドル円155円のときに買った外貨建て資産を前提にした、単純な割り算です。
| そのときのドル円 | 155円からの変化 | 株価±0%のときの円換算評価額 |
|---|---|---|
| 140円 | 15円の円高 | −9.7% |
| 145円 | 10円の円高 | −6.5% |
| 150円 | 5円の円高 | −3.2% |
| 155円 | ±0円 | ±0% |
| 160円 | 5円の円安 | +3.2% |
| 165円 | 10円の円安 | +6.5% |
| 170円 | 15円の円安 | +9.7% |
今回の160円から154円への動きに当てはめると、株価が1ミリも動かなくても、円換算の評価額は3.75%減っていた計算になります。100万円分持っていれば3万7,500円です。「今月なんだか減ったな」の正体が、実は株価ではなく為替だった、ということは普通に起こります。
逆向きも同じで、円安に振れた月は、中身が何も変わっていなくても評価額は増えます。この数年、積立の成績がよく見えた要因のうち、相応の部分が円安だったことは意識しておいていいと思います。
「円安のときに買うのは高いのでは」という不安をどう扱うか
積立をしている人から一番よく出るのが、この問いだと思います。円安の局面で外貨建てを買い続けるのは、高値づかみではないのか、と。
同じ5万円で買える量は、毎月勝手に変わっている
先に、積立という仕組みの側から見ておきます。毎月5万円を同じ日に積み立てている場合、その5万円で取得できる外貨建て資産の量は、為替によって毎月変わります。
| そのときのドル円 | 毎月5万円で買える外貨建て額 | 155円のときとの差 |
|---|---|---|
| 145円(円高) | 約344.8ドル | +6.9% |
| 150円 | 約333.3ドル | +3.3% |
| 155円 | 約322.6ドル | ±0% |
| 160円 | 約312.5ドル | −3.1% |
| 165円(円安) | 約303.0ドル | −6.1% |
定額で積み立てている限り、円安の月には自動的に少なく買い、円高の月には自動的に多く買っています。「円安のときに買うのは高いのでは」という不安に対して、仕組みのほうは黙って調整をかけている、ということです。ここを知らずに円安の月だけ積立を止めると、その調整を自分で壊すことになります。
為替を見て積立額を加減するのは、アリかナシか
ここからは僕の見方です。先に言っておくと、僕はこれをアリともナシとも断じていません。判断の基準を為替の水準に置いていないからです。
結局、中長期的な相場観を持てているかどうかだと思っています。僕自身について言えば、日本と米国、円とドルという話なので、そこに着目して考えると、経済的な基礎力や今の状況からして、アメリカが強い時代が続き、日本が弱い時代が続くと思っています。だから中長期的には、どちらにしても円安トレンドに進んでいくと見ています。そういう自分の中での相場観を持てている人は、160円が152円になったといった水準の話には、あまり右往左往しないで続けることができるんじゃないかと思います。
これは僕個人の見方であって、当たる保証はどこにもありません。大事なのは結論そのものより、自分なりの中長期の見方を先に持っているかどうかです。そこがないまま毎月の為替だけを見て金額を触ると、判断の拠りどころが数字の上下しかなくなります。
僕自身は、相場が荒れているときも見には行きますが、基本的には放っておきます。余裕資金しか入れていませんし、短期的なキャピタルゲインを狙うつもりがまったくない投資をしているからです。放っておけば10年20年単位で見れば伸びる、と思える対象に、そう思える気持ちでできる投資をする。投資の鉄則だと思いますが、意外とできていない人が多いんじゃないでしょうか。
円と外貨のバランスを、僕がどう見ているか
もう一つよく聞かれるのが、資産全体のなかで円と外貨をどう配分しているか、という話です。
比率では考えない。ただし生活通貨は日本円
正直に言うと、比率で考えるということはあまりしていません。何%を外貨に、といった管理はしていないです。ただ、どう考えても僕はいま日本に住んでいて、生活通貨が日本円です。日本円の比率を減らしすぎると、結局のところ手元資金の柔軟性がなくなります。
ここは前に書いたキャッシュの話とつながります。キャッシュは何より強くて、キャッシュがあるからやりたいことができる、というのが僕の基本的な立場です(金利のある世界で、「強いキャッシュ」はどこに置くのか)。その強さは、円で暮らしている人にとっては円で持っているから発揮されるものです。外貨建て資産をいくら持っていても、明日必要な支払いには直接使えません。
ドルを持ちすぎないのは、円転したくない局面を作らないため
ドルで持ちすぎると、この状況ではあまり円転したくない、というときが必ず来ます。そのときに円が必要だと、不本意なレートで換えることになる。だからドルを持ちすぎないようには、比率の中で考えているかもしれません。比率で管理していないと言いながら、結果としてはそこを見ている、という感覚です。
整理すると、為替の水準に合わせて配分を動かしているのではなく、「円で暮らしている」という動かしようのない制約から逆算して、円の手元資金を細らせないようにしている、ということです。見ているのは相場の予想ではなく、自分の手元の柔軟性のほうです。
まとめ
9月に為替は6円動き、来週にはFOMCと日銀の会合が控えています。株価が動かなくても、この値幅だけで円換算の評価額は4%近く動きます。まずはそれを知っておくこと。そのうえで、積立額を触るかどうかの基準は、為替の水準ではなく、自分が中長期の相場観を持てているかどうかだと思っています。相場観がある人は、水準の上下では止まりません。そして僕の場合、外貨の配分を決めているのは相場の予想ではなく、円で暮らしているという事実のほうです。
【追記】その日銀の会合の結果は9月18日に出ました。政策金利は1.00%から1.25%へ。その0.25%が住宅ローンや預金にいつ届くのかは、日銀1.25%への利上げ、その0.25%が家計に届くのはいつかのほうで整理しています。
※本記事は執筆時点の情報にもとづきます。制度・市況は変わることがあります。投資判断はご自身の責任でお願いします。
note には、仕事やキャリアの考えごとを書いています
公認会計士・税理士として実務で見ていること、キャリアで迷ったこと、お金との距離感。答えの出ていない話も含めて置いています。

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