メガバンクの普通預金が年0.4%になり、個人向け国債(変動10年)は2026年9月募集分で年1.95%。「現金は置いておいても増えない」という前提が、確かに崩れました。ただ、この話を持ちかけたときの僕の第一声は「置き場所で差がつくのは、今に始まったことじゃないよ」でした。金利がニュースになった瞬間だけ置き場所を考えるのは、順番が逆だと思っています。この記事では、いまの数字を正確に並べたうえで、僕がどういう順番で考えているかを最後に書きます。
2026年9月、現金の置き場所でどれだけ差がつくのか
まず事実を並べます。ここは主観を挟まず、公表されている数字だけで整理します。
メガバンクの普通預金は年0.4%、ネット銀行はさらに上
三菱UFJ・三井住友・みずほの3行は2026年6月16日に普通預金金利を年0.3%から年0.4%へ引き上げると発表し、同年8月3日から適用しています。日本銀行が同日の金融政策決定会合で政策金利を1.0%へ引き上げたことを受けたもので、三菱UFJと三井住友については合併前の旧行時代である1992年8月以来、およそ34年ぶりの水準とされています。
ネット銀行はさらに上を行きます。条件なしで高い水準を出している例としては、あおぞら銀行BANKが2026年7月1日から100万円までを年1.0%としています。給与振込指定や証券口座連携といった条件付きで上乗せする銀行もあり、auじぶん銀行は2026年8月1日から最大年0.75%、楽天銀行はマネーブリッジ利用で2026年8月3日から最大年0.48%へ引き上げています。ただし条件付きの金利は、上限額・適用条件・期間の3点を確認しないと、表示された数字がそのまま自分に付くとは限りません。
個人向け国債(変動10年)は9月募集分で年1.95%
個人向け国債の変動10年は、2026年9月募集分(第198回)の初回適用利率が年1.95%(税引後1.5538575%)。前月から0.08%の上昇です。募集期間は2026年9月3日〜9月30日、発行日は同年10月15日となっています。
仕組みも押さえておきます。変動10年の適用利率は「基準金利×0.66」で決まり、基準金利は10年固定利付国債の入札結果から算出される複利利回りです。利率は半年ごとに見直され、実勢金利が下がった場合でも年0.05%の最低金利保証があり、上限はありません。つまり、金利が上がる局面では追随して上がる商品です。定期預金のように「預けた時点の利率で満期まで固定」ではない、というのが最大の性格の違いです。
定期預金は、キャンペーン金利と常設金利を分けて見る
1年ものの定期預金は、2026年9月時点でSBJ銀行・東京スター銀行・SBI新生銀行が年1.70%と最上位ですが、東京スター銀行とSBI新生銀行は新規口座開設者限定です。募集総額の上限・預入期限・新規限定のいずれかが付いた「終了条件のある金利」であることが多く、満期時には通常金利に戻ります。終了条件のない常設の水準としては、あおぞら銀行が年1.4%、徳島大正銀行が年1.40%、大和ネクスト銀行が年1.30%、オリックス銀行が年1.25%といったところです。比較するなら、キャンペーン金利ではなく常設金利どうしで並べたほうが実態に近くなります。
置き場所を「利回り×引き出しやすさ×元本」の3軸で並べる
利回りだけで並べると必ず判断を誤ります。現金の置き場所は、利回り・引き出しやすさ・元本の安全性の3つを同時に見るべきものだからです。2026年9月時点の代表的な選択肢を並べます。
4つの置き場所の比較表
| 置き場所 | 利回り(2026年9月時点) | 引き出しやすさ | 元本 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| メガバンクの普通預金 | 年0.4% | 即日・制限なし | 保護あり(預金保険) | 金額の上限なく一律 |
| 高金利ネット銀行の普通預金 | 年1.0%(100万円まで)ほか | 即日・制限なし | 保護あり(預金保険) | 上限額・条件・期間の確認が必須 |
| 定期預金(1年) | 常設で年1.25〜1.40%前後 | 満期まで原則据え置き | 保護あり(預金保険) | キャンペーン金利は満期後に通常金利へ |
| 個人向け国債(変動10年) | 年1.95%(初回・半年ごと見直し) | 発行後1年は換金不可 | 国が発行、額面で償還 | 中途換金時に直近2回分の利子相当額を差し引き |
この表で見てほしいのは、利回りが上がるほど「引き出しやすさ」が確実に削られている、という一点です。年1.95%は年0.4%の約5倍ですが、その差は運用の巧拙ではなく、1年間動かせないことを引き受けた対価です。
100万円を1年置いた場合の税引後利息
実額にすると差がはっきりします。利子には20.315%が源泉徴収されるので、手元に残るのは税引前の79.685%。100万円を1年置いた場合の概算です(個人向け国債は初回利率が1年続いたと仮定した参考値。実際は半年ごとに見直されます)。
| 置き場所 | 年利 | 税引前の利息 | 税引後の手取り |
|---|---|---|---|
| かつての普通預金水準 | 0.001% | 10円 | 約8円 |
| メガバンクの普通預金 | 0.4% | 4,000円 | 約3,187円 |
| 高金利ネット銀行の普通預金 | 1.0% | 10,000円 | 約7,968円 |
| 定期預金(常設の上位水準) | 1.25% | 12,500円 | 約9,960円 |
| 個人向け国債(変動10年) | 1.95% | 19,500円 | 約15,538円 |
メガバンクの普通預金と個人向け国債の差は、100万円あたり年約1.2万円。同じ考え方で1,000万円なら、税引後で年約12.4万円の差になります(0.4%で約31,874円、1.95%で約155,386円)。金額が大きくなるほど、置き場所の意思決定が効いてくるのは事実です。
それでも僕は、置き場所より先に決めることがあると思っています
ここからは僕の見解です。数字を並べたうえで言いますが、この記事を「じゃあどこに移そうか」で読み終えてほしくありません。
「キャッシュは強い」の本当の意味は、余っているキャッシュの話
僕は以前から「キャッシュは何より強くて、キャッシュがあるから人生を選べるし、やりたいことができる」と言ってきました。ただ、これはよく誤解されます。僕が言っているのは、自分が安心できる金額をしっかりキープしたうえで、それでも残っているキャッシュ——ある意味フリーキャッシュフローのようなもの——がどれだけあるかによって、人生の高さが変わる、という話です。
裏を返すと、最低防衛ラインに達するまでは、キャッシュがあろうとなかろうと、そんなに考える余裕はないということです。とにかくまずキャッシュを溜め込んで、それからしっかり考えようよ、と。順番はそこです。
利回りと機動力は、どちらが良いと論じられるものではない
「利回りを取るか、すぐ動かせることを取るか」という問いの立て方自体に、僕は違和感があります。これはどちらが良いと論じられるものではありません。そもそも機動力を持たせるべき金額をしっかりキープするからこそ、高い利回りの商品まで取り組むことができる。二択ではなく、前提と結果の関係です。
だから、動かせるお金が足りていない状態で「1.95%のほうが得だから国債へ」と動かすのは、一番やってはいけない部類の判断になります。個人向け国債は発行後1年間は中途換金できません。1年間触れないお金として置ける分でなければ、そもそも候補に入らないという話です。
この感覚は、僕がiDeCoよりNISAを優先すると言っている理由とも一本の線でつながっています(iDeCoとNISA、片方しか選べないならどっち?)。いつでもキャッシュに戻せるかどうかを、僕はかなり重く見ています。
最低ラインは1,000万円。届かないなら、置き場所より先にやることがある
生活防衛のための最低限は1,000万円
具体的な金額も出しておきます。生活防衛のための最低限の金額は、僕は1,000万円が望ましいと思っています。「生活費の3ヶ月分」「半年分」といった一般的な目安より、はっきり高い水準です。
この1,000万円をどこに置くか、という話に限れば、上の表がそのまま使えます。すぐ動かす必要がある部分は普通預金に、当面動かさない部分は定期や個人向け国債に。ただ、僕がここで強調したいのはそこではありません。
「1,000万円なんて無理」という人こそ、順番を確認してほしい
1,000万円なんて稼げないよ、という人はいると思います。その場合は、キャッシュをどこに置くかとか投資の動向とか、そういうことの前に、まずそういった金額を稼げるように自分の能力へ投資していくべきだと思っています。
貯蓄はいくらがいいか、いくら投資すべきか、という相談はよく受けます。でも、そもそも年収1,000万円くらいを目指せるように自分に投資するのが先であって、財テク的なものはもっとその後にしないと、結局のところ投資できる金額も貯蓄できる金額も増えていきません。本末転倒です。この点が抜けてしまっている人が、本当に多いと感じています。
年0.4%と年1.95%の差は、100万円で年1.2万円でした。同じ1年で年収を50万円上げられたなら、置き場所の最適化を40年分やったのと同じ計算になります。どちらに時間を使うべきかは、この比較だけでもわりとはっきりします。僕自身が資格の勉強に時間とお金を突っ込んだのも、結局この順番の話でした。
最低ラインを確保したあと、置き場所をどう決めるか
順番の話をしたうえで、実務的なところに戻します。安心できる金額を確保できている人が、その先をどう配置するか。
「いつ使うか」で切り分ける
判断軸はシンプルで、そのお金を使う時期が決まっているかどうかです。
- いつ出ていくか分からないお金(医療費・失職・急な引っ越しなど):普通預金。利回りは最後に考える
- 1年以内に使うことが決まっているお金(税金・学費・車検・引っ越し費用など):普通預金、または満期を使う時期に合わせた定期預金
- 当面使う予定がなく、1年間触らないと言い切れるお金:定期預金や個人向け国債が候補に入る
3番目に該当する金額がゼロなら、それは置き場所を変えるフェーズにまだ来ていない、というだけの話です。無理に動かす理由はありません。
個人向け国債を使うなら、中途換金のルールは先に知っておく
個人向け国債は発行後1年を経過すれば、額面1万円単位で中途換金ができます。ただし、直前2回分の各利子(税引前)相当額に0.79685を乗じた金額が差し引かれます。0.79685を掛けているのは、利子の受け取り時にすでに20.315%分の税金が差し引かれているためです。
差し引かれるのは受け取った利子の範囲であって、元本が削られるわけではありません。とはいえ「1年経てばいつでも同じ条件で戻せる」わけでもない。この2点をセットで理解したうえで、1年触らないと言い切れる金額だけを入れる。それが最低条件です。中途換金の実額は財務省がシミュレーションを公開しているので、購入前に一度通しておくと感覚がつかめます。
借りる側の判断とは、分けて考える
金利のある世界では「置く側」と「借りる側」の両方が動きます。ただ、この2つは別々に判断すべきものです。金利が上がったから預金を国債へ、ついでに住宅ローンも繰り上げ返済で、とまとめて動かすのは、機動力の観点では最悪の組み合わせになりかねません。借りる側の話は別の記事で整理しています(金利1%時代、繰上返済しないという判断は変わるのか)。
まとめ
普通預金0.4%、個人向け国債1.95%。置き場所で差がつくのは確かですが、それは今に始まったことではありません。先に決めるのは、自分が安心できる金額をいくらキープするか。機動力を持たせるべき金額をしっかり確保するからこそ、高い利回りの側に手を出せます。そして、その金額に届いていないなら、置き場所の最適化より先に、稼ぐ力へ投資するほうが効きます。順番を間違えなければ、置き場所の話はいつでも間に合います。
※本記事は執筆時点の情報にもとづきます。制度・市況は変わることがあります。投資判断はご自身の責任でお願いします。
note には、仕事やキャリアの考えごとを書いています
公認会計士・税理士として実務で見ていること、キャリアで迷ったこと、お金との距離感。答えの出ていない話も含めて置いています。

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