NISA口座で国内株を持っていれば、配当も当然に非課税。そう思っている方は多いと思います。ところが実際には、配当金の「受取方式」がひとつ違うだけで、NISA口座の株なのに20.315%が引かれた金額で入ってきます。しかも権利確定日を過ぎてから直しても、その回には間に合いません。9月の権利確定を控えたこの時期に、確認しておきたい論点です。
先に、この論点についての私の立場を書いておきます。正直なところ、あまり興味のあるテーマではありません。NISAという制度の趣旨を考えたら、配当が課税される受取方式を選択肢として残しておく意味がよくわからないですし、わざわざそれ以外を選んでしまう背景も、私にはうまく想像がつかない。それでも記事にするのは、確認そのものは5分で終わるからです。5分で終わる話に、それ以上の意味を持たせる必要はありません。
NISA口座なのに配当が課税される、たったひとつの理由
結論から書くと、原因は保有している商品でも証券会社でもなく、配当金の受取方式の設定です。上場株式の配当金は、株主側が受取方法を4つの中から選べる仕組みになっていて、その中で証券口座に入金される方式だけがNISAの非課税に対応しています。
4つの受取方式と、非課税になるのはどれか
上場株式の配当金の受取方法は、次の4種類です。NISAの非課税が効くのは、このうち一番上のひとつだけ。
| 受取方式 | どこに入るか | NISAの非課税 |
|---|---|---|
| 株式数比例配分方式 | 証券会社の取引口座 | 効く(非課税) |
| 登録配当金受領口座方式 | 指定した銀行口座に全銘柄まとめて | 効かない(20.315%課税) |
| 個別銘柄指定方式 | 銘柄ごとに指定した銀行口座 | 効かない(20.315%課税) |
| 配当金領収証方式 | 郵送された領収証を銀行等の窓口へ | 効かない(20.315%課税) |
20.315%の内訳は、所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%。年10万円の配当なら、およそ2万円が引かれる計算になります。NISA口座で買っているのに、です。日本証券業協会も、非課税で受け取るには株式数比例配分方式の選択が必要だと明記しています(NISA口座における上場株式の配当金等受取方式に関する注意事項)。
投資信託の分配金は、この話の対象外
ここを混同すると無駄に不安になるので、切り分けておきます。この論点が関係するのは、証券取引所に上場しているもの——個別株、ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)です。
一方、いわゆる普通の投資信託(非上場の公募投信)の分配金は、販売会社である証券会社を通じて支払われる仕組みなので、受取方式の設定に関係なくNISAの非課税が効きます。インデックス投信の積立だけをしている方は、そもそも今回の確認は不要ということになります。
自分がどの方式になっているかを確かめる手順
やることは単純です。使っている証券会社の口座管理画面を開いて、現在の設定を見るだけ。
口座管理画面のどこを見るか
証券会社によって名称は少しずつ違いますが、おおむね「口座管理」「お客さま情報」「登録情報」あたりのメニューの中に、「配当金受取方法」「配当金受領方式」といった項目があります。そこが「株式数比例配分方式」になっていればそれで終わり。何もしなくて大丈夫です。
別の方式になっていた場合は、同じ画面から変更を申し込みます。ネット証券であればオンラインで完結することがほとんどで、所要時間は数分です。ただし反映までに数営業日かかる場合があり、締切の考え方も証券会社ごとに異なります。ここは各社のFAQで必ず確認してください。
証券会社を複数使っていても、方式は「全口座で共通」
意外と知られていないのがこれです。配当金の受取方式は証券保管振替機構(ほふり)を通じて管理されているため、口座ごと・銘柄ごとに別の方式を選ぶことはできません。どこか1社で変更すると、その人が持っているすべての証券口座の設定が一斉に切り替わります。
これは裏を返せば、確認も1社分で済むということ。メインで使っている証券会社の設定を見れば、他社の口座も同じ状態だと考えて差し支えありません。
なお、配当金を証券口座で受け取る設定にしておくと、入ってきた配当をそのまま次の買付に回せます。まだNISA口座を持っておらず、これから開設するという方は、口座開設の申込画面(PR)で受取方式もあわせて設定しておくと、後から直す二度手間になりません。
2026年9月の権利確定に間に合わせる
この確認に期限があるのは、権利確定日を過ぎてから方式を変更しても、その回の配当には遡って適用されないからです。9月は3月決算企業の中間配当の権利確定が集中するため、今まさに逆算しておきたいタイミングになります。
権利付最終日から逆算する
2026年9月末を権利確定日とする銘柄の場合、スケジュールは次のとおりです。国内株の受渡しは約定日から2営業日後(T+2)なので、権利確定日の当日に買っても間に合いません。
| 日付 | 呼び方 | 意味 |
|---|---|---|
| 2026年9月28日(月) | 権利付最終日 | この日の取引終了時点で保有していれば権利を取得 |
| 2026年9月29日(火) | 権利落ち日 | この日に買っても今回の配当は受け取れない |
| 2026年9月30日(水) | 権利確定日(基準日) | 株主名簿が確定する日 |
受取方式の変更は、遅くともこの基準日までに手続きが完了している必要があります。反映に数営業日かかることを踏まえると、実質的な締切は9月28日より手前と考えておくのが安全です。変更手続き自体は数分で終わるので、思い出した日にその場で済ませてしまうのが一番確実だと思います。
間に合わなかった回はどうなるのか
その回の配当については、NISA口座で保有していても20.315%が源泉徴収された金額で入ってきます。取り戻す手段は基本的にありません。NISA口座内の取引は損益通算や確定申告による還付の対象外なので、課税された分をあとから精算するという発想自体が使えないわけです。
ただし、影響するのはその回だけ。設定さえ直しておけば、次回以降の配当は非課税で受け取れます。過ぎた分を悔やむより、来期に間に合わせるほうが建設的です。
配当を狙うのか、値上がり益を狙うのか
ここまでが手続きの話。もうひとつ、よく聞かれるのが「非課税枠は配当で使ったほうが効率がいいのか、値上がり益を狙うべきか」という論点です。
非課税の効き方は、たしかに少し違う
配当は、受け取るたびに課税されるかどうかが決まります。だから非課税の恩恵を毎年こまめに受け取れる。一方の値上がり益は、売却して初めて課税関係が生じるので、非課税の恩恵は出口でまとめて効きます。
どちらが有利かは、結局のところ保有期間と実際のリターン次第です。長期で大きく育った銘柄を最後に売るなら値上がり益側の非課税額が大きくなりますし、そこそこの株価で配当を長く受け取り続けるなら配当側の累計が効いてきます。事前にどちらが上かを断言できるものではありません。
私の答えは「どちらでもいい」
この問いに対する私の回答は、身も蓋もないのですが、どちらでもいい、好きなほうを選んでください、です。理由ははっきりしていて、何を選んだところで、結局はほぼ20%の下駄を履かせてもらっているという事実は変わらないからです。
配当か値上がり益かの最適解を探して手が止まるくらいなら、深く考えずに非課税枠を使って投資に回してしまったほうがいい。放っておいて10年20年で伸びると思える対象に、そう思える気持ちで入れておく。私が投資に対して持っている基準は、だいたいこれに尽きます。
まとめ
やることは一つだけです。証券会社の口座管理画面を開いて、配当金の受取方式が「株式数比例配分方式」になっているかを見る。なっていれば終了、なっていなければその場で変更する。全証券口座で共通の設定なので、確認は1社分で足ります。
最後に、この話をどのくらいの重さで受け取ってほしいかを書いておきます。私としては、一応チェックしておいたらいいんじゃないでしょうか、それ以上はない、という温度感です。せっかく非課税という下駄を履かせてもらっているのに、手続きの設定ひとつでそれを自分から脱いでしまうのはもったいない。でも逆に言えば、5分で確認して、あとは忘れていい話でもあります。手続きの最適化に時間を使うより、非課税枠を使って投資を続けていることのほうが、10年後にはずっと効いてきます。
※本記事は執筆時点の情報にもとづきます。制度・市況は変わることがあります。投資判断はご自身の責任でお願いします。
note には、仕事やキャリアの考えごとを書いています
公認会計士・税理士として実務で見ていること、キャリアで迷ったこと、お金との距離感。答えの出ていない話も含めて置いています。

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