「10月からふるさと納税が変わる。9月中に駆け込め」。この一文を、ここ数週間で何度も見かけた人は多いと思います。2026年10月1日から、ふるさと納税の指定基準が見直されるのは事実です。ただ、変わるのは自治体と事業者の側のルールであって、寄付する側の控除の計算式でも上限額でもありません。ではこの「駆け込め」の空気を、どう受け取ればいいのか。
まず、よこまる本人の見解から。「煽りすぎじゃないかな。過去のポイント付与規制などに比べると明らかにバリューのない変更であり、あくまで透明化に資すると思う。どちらかというとマーケティング的に使われてしまっていて、無視して良いレベル。冷静に静観するべき局面かと」。ふるさと納税は上限ギリギリまで使う派を公言してきた人の答えが、今回は「静観」でした。制度の変化そのものより、変化の伝わり方のほうを問題にしている、ということです。
よこまる
【2026年10月24日追記】10月1日から、新しいルールでの指定が始まりました。この記事で書いたとおり、変わったのは自治体と事業者の側のルールです。寄付する側の控除の計算式も、上限額の決まり方も、年内(12月31日まで)という締切も変わっていません。年内に寄付するなら、先に今年の所得を見積もってから金額を決める。これは10月以降も同じです。
2026年10月のルール変更で、ふるさと納税の何が変わるのか
ふるさと納税には、総務省が自治体を指定する仕組みがあります。指定を受けた自治体への寄付だけが控除の対象になる、という建て付けです。この指定対象期間は毎年10月1日から翌年9月30日までで、2026年10月1日から始まる期間の指定から、基準が三つの方向で見直されます。いずれも「自治体と事業者が守るべき条件」の話です。
募集に使えるお金の上限が、5割から47.5%へ
これまで、自治体が寄付の募集にかけられる費用は寄付額の5割以下と決められていました。返礼品の調達費、送料、決済手数料、ポータルサイトへの手数料などの合計です。2026年10月からの指定では、この枠が段階的に絞られます。
| 指定の年 | 募集に使える費用 | 自治体に残る財源 |
|---|---|---|
| 現行(〜2026年9月) | 5割以下 | 5割以上 |
| 令和8年(2026年10月〜) | 47.5%以下 | 52.5%以上 |
| 令和9年(2027年10月〜) | 45%以下 | 55%以上 |
| 令和10年(2028年10月〜) | 42.5%以下 | 57.5%以上 |
| 令和11年(2029年10月〜) | 40%以下 | 60%以上 |
一年目の変化幅は2.5ポイント。そこから4年かけて、ゆっくり4割まで下りていきます。なお返礼品そのものの「調達価格は寄付額の3割以下」という基準は、今回変わりません。絞られるのは返礼品の中身ではなく、送料や手数料まで含めた募集コスト全体の枠です。
地場産品基準は「付加価値の過半」を価格で測る方向へ
返礼品は、その自治体の地場産品であることが原則です。加工品については以前から「区域内での製造・加工によって価値の過半が生まれていること」が条件とされてきましたが、この「過半」をどう測るかが自治体ごとにばらついていました。
2026年10月からは、付加価値の割合を原則として価格ベースで算定することに統一されます。あわせて、製造者が「区域内で価値の過半が生じた」ことを証明し、自治体がその証明内容を公表することが求められます。自治体のロゴを入れただけの工業製品についても、直近1年間の配布・販売実績数量が上限とされる扱いになります。
募集費用の公表──100万円以上の支払先を明らかにする
三つ目が透明化です。自治体は、寄付の募集に関して1支払先あたり年間100万円以上を支払った相手について、支払先・金額・目的を公表することが求められます。初回の公表は2026年9月に予定されています。どの自治体が、どのポータルサイトや事業者に、いくら払っているのか。これまで見えなかった部分が外から見えるようになります。
よこまるが「あくまで透明化に資する」と言っているのは、この三点セットの性格を指しています。寄付者から何かを取り上げる改正ではなく、お金の流れを見えるようにして、自治体に残る割合を引き上げる改正だということです。
変わらないもののほうが、圧倒的に多い
ここが今回いちばん大事なところです。「10月から損になる」という受け取り方が広がっていますが、寄付する側の損得を決めている部分は、10月に一切動きません。
控除の計算式も、上限額の決まり方も動かない
ふるさと納税の控除は、所得税分・住民税の基本分・住民税の特例分の三段構えでできています。この式も、自己負担が2,000円で済むという原則も、上限額が住民税所得割額から決まるという構造も、10月の改正では変更されません。つまり、9月30日に寄付しても10月1日に寄付しても、あなたの手取りに対する効き方は同じです。
| 項目 | 2026年10月の改正で | 補足 |
|---|---|---|
| 自己負担2,000円の原則 | 変わらない | 上限内に収まっていれば同じ |
| 控除の計算式(三段構え) | 変わらない | 所得税分・住民税基本分・住民税特例分 |
| 控除上限額の決まり方 | 変わらない | その年の住民税所得割額がベース |
| ワンストップ特例の要件 | 変わらない | 寄付先5自治体以内・確定申告不要な人 |
| 年内寄付の締切 | 変わらない | 12月31日の決済完了分まで |
| 返礼品の調達価格3割ルール | 変わらない | 絞られるのは募集費用全体の枠 |
| 募集費用の上限 | 5割 → 47.5% | 自治体側のルール |
| 地場産品の判定 | 価格ベースに統一・証明と公表 | 自治体・事業者側のルール |
| 募集費用の開示 | 100万円以上の支払先を公表 | 自治体側のルール |
太字になっている三つは、いずれも自治体と事業者が守る条件です。寄付者が9月中に何かをしないと失われる権利は、この改正のなかにひとつもありません。
「改悪」と呼ばれた前回とは、性格が違う
よこまるが比較対象に挙げた「ポイント付与規制」は、2025年10月1日から施行されたものです。ポータルサイトが寄付者に独自ポイントを還元することが禁止され、実質的な還元率が下がりました。あれは寄付者の取り分が直接削られる変更だったので、駆け込みに合理性がありました。
今回は違います。寄付者の取り分を決める式には手が入っていない。同じ「10月の制度変更」という見出しでも、中身の性格が逆だということです。
よこまる
影響が出るとすれば、返礼品の「棚」のほう
とはいえ、まったく何も起きないわけではありません。地場産品基準の判定が厳しくなり、募集費用の枠が絞られる以上、いま掲載されている返礼品のなかには、条件を満たせなくなるものが出てきます。
掲載終了が予測されているカテゴリ
ふるさとチョイスは、今回の制度変更で掲載終了などが予測されるカテゴリとして、次の18種を挙げています。
- 美容・健康家電/化粧水・乳液/その他美容/健康食品
- 空調・季節家電/パソコン・周辺機器/時計/家具/寝具
- ファッション/釣り具
- ウイスキー/ワイン/おせち/牛タン/羊肉/鮭・サーモン/チョコレート
並びを見るとわかりますが、傾向ははっきりしています。区域内で生まれた付加価値が説明しにくいもの——原材料を外から仕入れて組み立てる工業製品、産地が域外の食材を加工したもの——が並んでいます。ただし、ふるさとチョイス自身が「必ずしも以下カテゴリのすべての品が対象となるとは限らない」と注記しているとおり、カテゴリごと消えるという話ではありません。同じ牛タンでも、区域内での加工の実態が証明できるものは残ります。
それでも「駆け込み」が合理的にならない理由
ここで判断が分かれます。「欲しい返礼品が消えるかもしれないなら、9月中に押さえるべきでは」と考えるのは自然です。ただ、その判断には前提がひとつ要ります。自分の今年の上限額を、すでに正確に把握していることです。
上限額を把握しないまま「消えるかもしれないから」と寄付を積み上げると、超過分は控除が一切効かず、全額が自己負担になります。返礼品の調達価格は寄付額の3割が上限ですから、上限内で寄付したときに得られるのは3割相当。上限を超えた部分で失うのは10割です。取れるリターンが3割、外したときの損失が10割という形をしている以上、情報に急かされて動く局面ではありません。
加えて、10月1日を境に返礼品が一斉に消えるわけでもありません。新しい基準が適用されるのは10月からの指定ですが、どの品が棚から下りるかは、自治体と製造者が付加価値の証明を出せるかどうかで個別に決まります。証明が整えば残りますし、整理に時間がかかる品は後から下りる。「9月30日が最後のチャンス」という言い方は、実態より一段強い表現です。
9月中にやるべきなのは、駆け込みではなく所得の見積もり
では、今年まだ1円も寄付していない人が9月中にやることは何か。よこまるの答えは明快でした。「9月中にやるべきことは駆け込みでもなんでもなく、冷静に自分の今年の所得を見積もることだと思う」。
上限を決めるのは「寄付した年」の所得
ふるさと納税の上限額を決めているのは、去年の年収ではなく、寄付を実行した年の1月1日から12月31日までの所得です。各サイトのシミュレーターが去年の源泉徴収票を入力させる作りになっているのは、年の途中では今年の数字が確定しないからで、年収が例年どおりなら実務上それで問題ありません。ずれるのは、今年だけ収入が動いた人です。昇給、転職、副業の開始、産休・育休、退職。詳しくは年収が変わった年のふるさと納税で、パターン別の動き方を整理しています。
9月中にやること/やらなくていいこと
| 内容 | 理由 | |
|---|---|---|
| やること① | 直近の給与明細から、年内の給与・賞与の着地を出す | 上限額のベースは今年の所得。9月なら4分の3が見えている |
| やること② | 今年だけの増減(転職・副業・休業・退職)を書き出す | 去年の源泉徴収票との差は、ここにしか出てこない |
| やること③ | 去年の住民税決定通知書で、所得割額の水準を確認する | 上限額は住民税所得割額から逆算される |
| やること④ | 確実に上限内と言える金額を決めて、そこまでを寄付する | 読めない部分は12月まで残せばいい |
| やらなくていい① | 9月30日までに枠を使い切ること | 控除の締切は12月31日。10月に何も失われない |
| やらなくていい② | 「消えるかも」で欲しくない返礼品を押さえること | 超過すれば全額自己負担。急ぐほど精度が落ちる |
| やらなくていい③ | ワンストップ特例の書類を今から取り寄せること | 寄付後に自治体から届く。申請期限は翌年1月10日 |
住民税決定通知書の読み方は住民税決定通知書で上限額を答え合わせする実務に、上限まで使い切るか余裕を残すかの判断は上限ギリギリまで使う?余裕を残す?にまとめてあります。
見積もりが済んで、確実に上限内と言える金額が決まったら、あとは寄付先を選ぶだけです。控除の扱いはどの窓口を使っても同じなので、普段使っている決済に寄せるのが手間の少ない選び方になります。楽天ふるさと納税(PR)やau PAYふるさと納税(PR)はそのまま決済につながりますし、生産者から直接届くポケマルふるさと納税(PR)のように、作り手と産地が最初から見えている窓口もあります。![]()
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2027年からの「193万円上限」は、ほぼ全員に関係がない
もうひとつ、あわせて話題になっているのが超高所得者への控除上限です。2026年度の税制改正大綱に盛り込まれ、2027年分の寄付から、住民税の特例分の控除に193万円という上限が設けられる見通しになっています。対象は給与収入1億円クラスの層で、一般的な会社員や共働き世帯には関係しません。2026年分の寄付にも影響しません。
よこまる
まとめ
2026年10月1日からの指定で、募集に使える費用は5割から47.5%へ、地場産品の判定は価格ベースへ、100万円以上の支払先は公表へ。三つとも自治体と事業者のルールで、寄付する側の控除の計算式も上限額も動きません。返礼品の棚は少しずつ入れ替わりますが、それは10月1日に一斉に起きることではない。
そして、使う量そのものについて、よこまるの方針は今年も変わっていません。「上限まではただただ2,000円という自己負担額をゴールに、お得度が上がっていくだけ。上限まで使わないという発想自体が、制度を理解できていないことを示していると思う」。やるなら上限まで、やらないなら0。この0か100の構えは、返礼品の条件が多少動いたくらいでは変わらない、ということです。
だからこそ、9月にやることは駆け込みではありません。自分が今年いくら稼いだのかを見積もって、確実に上限内と言える金額を決める。それさえ済んでいれば、10月でも12月でも、寄付の価値は変わらない。急かしてくる情報のほうを、いったん静観していい局面です。
※本記事は執筆時点の情報にもとづきます。税制・制度は変わることがあるので、最新は国税庁等の公式情報でご確認ください。一般的な情報提供であり、個別の税務相談ではありません。
note には、仕事やキャリアの考えごとを書いています
公認会計士・税理士として実務で見ていること、キャリアで迷ったこと、お金との距離感。答えの出ていない話も含めて置いています。

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