12月から1月にかけて配られる源泉徴収票を、支払金額だけ見て引き出しに入れている人がかなり多いと思っています。僕の考えはシンプルで、欄を全部覚える必要なんてもちろんありません。ただ、意味は知っておいたほうがいい。自分がどれだけ稼いで、そこからどれぐらいの所得控除をしてもらっているのか。そこが分かるだけで、この紙は十分に役に立ちます。
しかも2026年分(令和8年分)は、様式がほとんど変わらないのに中の数字が動く、少し特殊な年です。どこがどう動くのかを、国税庁の資料で確認しながら整理します。
源泉徴収票は「いくら稼いで、いくら引いてもらったか」の対応表
源泉徴収票には20を超える欄があります。全部を順番に読もうとすると、たいてい途中で飽きます。先に結論を言うと、最初に見るのは2つだけで足ります。
まず並べるのは「支払金額」と「所得控除の額の合計額」
ひとつめは ④支払金額。2026年中に支払が確定した給与・賞与の総額です。ここは手取りではなく、社会保険料も税金も引く前の金額。いわゆる年収がこれにあたります。
ふたつめは ⑥所得控除の額の合計額。社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除・生命保険料控除・地震保険料控除・障害者控除・寡婦控除・ひとり親控除・勤労学生控除・配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除・特定親族特別控除、そして基礎控除。これらを足した金額が入っています(出典:国税庁「令和8年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」)。
この2つを並べると、「これだけ稼いで、ここまでは課税の対象から外してもらった」という対応関係が見えます。順番としては、まずこの引き算の感覚をつかむところから。
よこまる
残りの欄は、その2つの内訳
残りの欄は、ほぼこの2つを分解したものです。⑤給与所得控除後の金額(調整控除後)は支払金額から給与所得控除を引いた後の金額。⑮社会保険料等の金額・⑯生命保険料の控除額・⑳基礎控除の額などは、⑥の中身。そして ⑦源泉徴収税額 が、年末調整を終えた時点で確定した1年分の所得税と復興特別所得税の合計です。
毎月の給与明細が月次の記録なら、源泉徴収票は年次の確定値。給与明細で毎月見るべき欄とセットで押さえると、1年の流れがつながります。
2026年分は、様式が同じまま数字がずれる年
ここが今年の本題です。国税庁は、令和8年度税制改正にともなう給与所得の源泉徴収票の様式改正はないと明記しています(出典:国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」Q3-3)。欄は去年と同じ。それでも入る数字は動きます。
⑳基礎控除の額は、合計所得に応じて5段階
基礎控除は2026年分から引き上げられました。令和7年分と並べるとこうなります。
| 本人の合計所得金額 | 給与だけの場合の収入金額 | 令和7年分 | 令和8年分 |
|---|---|---|---|
| 132万円以下 | 206万円以下 | 95万円 | 104万円 |
| 132万円超 336万円以下 | 206万円超 475万1,999円以下 | 88万円 | 88万円 |
| 336万円超 489万円以下 | 475万1,999円超 665万5,556円以下 | 68万円 | 68万円 |
| 489万円超 655万円以下 | 665万5,556円超 850万円以下 | 63万円 | 67万円 |
| 655万円超 2,350万円以下 | 850万円超 2,545万円以下 | 58万円 | 62万円 |
出典:国税庁 タックスアンサー No.1199 基礎控除/国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」。合計所得2,350万円超の区分(48万円・32万円・16万円・0円)に改正はありません。
見ていただきたいのは、全員が同じだけ増えるわけではないという点です。合計所得132万円超489万円以下の区分は88万円・68万円のまま据え置き。動いたのは、いちばん下の区分と、489万円を超えるあたりから上です。自分がどの行にいるかで、増えたのか変わらないのかが分かれます。
⑤給与所得控除後の金額は、最低保障が74万円に
給与所得控除の最低保障額が、65万円から74万円に引き上げられました。令和8年分・令和9年分は、給与等の収入金額220万円までが控除額74万円。850万円超の上限195万円は変わりません(出典:国税庁 タックスアンサー No.1410 給与所得控除)。
この引き上げに合わせて、扶養親族等の所得要件も動いています。扶養親族と同一生計配偶者は合計所得62万円以下(給与だけなら136万円以下)、配偶者特別控除の対象となる配偶者は62万円超133万円以下(給与だけなら136万円超207万円以下)、勤労学生は89万円以下(給与だけなら163万円以下)。いずれも令和7年分より枠が広がりました。
⑯生命保険料の控除額は、23歳未満の扶養親族がいる人だけ上限が上がる
見落としやすいのがここです。年齢23歳未満の扶養親族がいる場合、一般生命保険料控除の適用限度額が6万円(改正前4万円)になりました。令和8年分と令和9年分に適用される特例です。ただし一般・介護医療・個人年金を合わせた合計適用限度額は12万円のままで、ここは変わりません。
逆に、2026年分では動かないものもあります。ひとり親控除の38万円への引き上げは令和9年分以後の適用で、2026年分の年末調整には影響しません。2027年から始まる防衛特別所得税も令和9年1月以後の源泉徴収からなので、2026年分の源泉徴収票には出てきません。
よこまる
欄ごとの早見表|何の数字か/2026年分で動くか/ずれていたときの窓口
ここまでを1枚にまとめます。源泉徴収票を手元に置いて、上から順に突き合わせてみてください。
2026年分 源泉徴収票の読み合わせ表
| 欄 | 何の数字か | 2026年分で動くか | ずれていたときの窓口 |
|---|---|---|---|
| ④支払金額 | 1年間に支払が確定した給与・賞与の総額(手取りではない) | 動かない | 勤め先 |
| ⑤給与所得控除後の金額 (調整控除後) | 支払金額から給与所得控除(と所得金額調整控除)を引いた後の金額 | 動く(最低保障65万→74万円) | 勤め先 |
| ⑥所得控除の額の合計額 | 社会保険料控除から基礎控除までの所得控除の合計 | 動く(下の各欄の結果) | 勤め先 |
| ⑦源泉徴収税額 | 年末調整後に確定した所得税+復興特別所得税の年額 | 動く(上の3つの結果) | 勤め先 |
| ⑭特定親族特別控除の額 | 19歳以上23歳未満の子などについて控除した額(最大63万円) | 動く(所得要件62万円超123万円以下に) | 勤め先(申告書) |
| ⑮社会保険料等の金額 | 給与から引かれた社会保険料+申告した国民年金保険料等 | 動かない | 勤め先 |
| ⑯生命保険料の控除額 | 保険料控除申告書にもとづいて控除した生命保険料の額 | 23歳未満の扶養親族がいる場合は動く | 勤め先(証明書) |
| ⑰住宅借入金等特別控除の額 | 年末調整で差し引いた住宅ローン控除の額 | 動かない | 勤め先/初年度は確定申告 |
| ⑳基礎控除の額 | 基礎控除申告書から転記された基礎控除額 | 動く(最大104万円) | 勤め先 |
| ㉒控除対象配偶者 控除対象扶養親族等 | 控除の対象にした家族の氏名 | 動く(所得要件が62万円以下に緩和) | 勤め先(異動申告書) |
この表の使い方
いちばん手早いのは、去年の源泉徴収票と並べることです。「動く」と書いた欄が去年と同じ数字のまま、あるいは逆に不自然に減っているなら、そこが確認対象。金額そのものを暗算で検算する必要はありません。ずれているかどうかに気づければ十分です。
家族の構成が変わっていない前提で、支払金額がほぼ同じなのに⑥所得控除の額の合計額が去年より増えていれば、改正が反映されている可能性が高い、という読み方になります。
12月の手取りが増えて見えるのは、精算が12月に集まるから
「改正で減税になったのに、毎月の手取りが変わっていない」と感じていた人は多いはずです。これは気のせいではありません。
11月までの天引きは、改正前の税額表
国税庁は、令和8年11月までの給与等の源泉徴収事務に変更は生じないとしています。2026年分は、12月の年末調整の際に引き上げ後の基礎控除額と改正後の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」で1年分の税額を計算し、改正前の源泉徴収税額表で毎月徴収してきた分と精算する流れです。毎月の徴収額の合計が年税額より多ければ、その差額(過納額)が還付されます。
つまり、改正の効果が目に見えるのは12月の1回だけ。毎月の天引きが変わるのは令和9年分からで、そのために令和9年分の源泉徴収税額表が改正されています。2026年の年末調整で実務が変わらない理由も、この構造から来ています。
新しく扶養の要件を満たす家族がいる場合は、申告書の提出が必要
ここは放っておくと取りこぼす部分です。所得要件が緩んだことで新たに扶養親族等の要件を満たすことになった親族について控除を受けるには、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出が必要とされています。去年は所得が58万円を超えていて扶養から外れた家族が、62万円以下の新しい基準では対象に戻る、というケースがこれにあたります。
特定親族特別控除についても、扶養控除等申告書の「源泉控除対象親族」欄への記載の有無にかかわらず、特定親族特別控除申告書を勤め先に提出する必要があります。2026年分の年末調整で間違えやすい欄と重なるところなので、書類を出す段階で合わせて確認しておくと手戻りが減ります。
よこまる
数字がずれていたときの動き方
見つけたあとに何をするか。ここは2つに分かれます。
勤め先で直せるもの
扶養親族等の人数が年末調整後に増えた、減ったという異動は、勤め先で年末調整をやり直せます。増えた場合にやり直しを行うときは、その年分の源泉徴収票を作成・交付する日までに異動内容を記載した扶養控除等(異動)申告書を提出する形になります(出典:国税庁 タックスアンサー No.2671)。
生命保険料控除や地震保険料控除の証明書を出し忘れた、住宅ローン控除の2年目以降の書類が間に合わなかった、といったものも、まずは給与計算の担当に相談するのが早いです。
自分で確定申告するもの
年末調整のやり直しをしない場合でも、本人が確定申告をすれば還付を受けられます。そもそも年末調整では扱えない医療費控除・寄附金控除(ワンストップ特例を使わないふるさと納税を含む)・雑損控除は、確定申告の側の仕事です。
そのときに必要になるのが、まさにこの源泉徴収票。④支払金額・⑤給与所得控除後の金額・⑥所得控除の額の合計額・⑦源泉徴収税額を転記するところから申告が始まります。金額を自分で計算し直す必要はありません。e-Taxや確定申告書等作成コーナーを使えば、基礎控除も所得金額調整控除も自動で入ってきます。
なお、令和9年1月以後に提出する令和8年分の源泉徴収票は、市区町村に給与支払報告書を提出していれば税務署への提出が不要になりました。ただし受給者への交付は引き続き必要とされているので、手元に届く点は変わりません。
まとめ
2026年分の源泉徴収票は、様式が同じまま中の数字が動く年です。だからこそ、去年の紙と並べて「どこがずれたか」に気づけるかどうかが効いてきます。改正の金額を覚える必要はありません。ツールが入れてくれます。
そのうえで、僕が言いたいのはここです。自分がどれだけ稼いで、そこからどれぐらいの所得控除をしてもらっているのかは、理解したほうがいい。それが自分のキャッシュフローや人生の設計、インカムとエクスペンスのバランスを見ていくきっかけにもなります。お金に困っておらず、社会にも不満を感じていないなら、そのままでいい。そうでないなら、学んでみる価値はあると思っています。
※本記事は執筆時点の情報にもとづきます。税制・制度は変わることがあるので、最新は国税庁等の公式情報でご確認ください。一般的な情報提供であり、個別の税務相談ではありません。
note には、仕事やキャリアの考えごとを書いています
公認会計士・税理士として実務で見ていること、キャリアで迷ったこと、お金との距離感。答えの出ていない話も含めて置いています。

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