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年収が変わった年のふるさと納税。上限額は「いつの収入」で決まるのか

2026 10/24
税務・確定申告
2026年9月10日2026年10月24日

ふるさと納税の控除上限額は、去年の年収ではなく「寄付したその年」の所得で決まります。昇給・転職・副業・産休育休・退職。年収が動いた年は、去年の源泉徴収票を見て計算した上限額が、そのまま自己負担の増加につながることがあります。今年の収入が読めない年、寄付額はどう決めるのが正解なのか。上限ギリギリまで使う派として知られるよこまるの答えは、少し意外なものでした。

まず、よこまる本人の見解から。「所詮は寄付額の3割相当の何かがもらえるだけなんだから、リスクなんて取る必要はない。確実にこの分は上限額として大丈夫だなぁ、っていう部分だけをやればいいと思います」。ふるさと納税は上限ギリギリまで使う、0か100かだ、と言い続けてきた人の口から出たのが、この「確実な分だけ」でした。攻めるべき場面と、攻める意味がない場面を分けている、ということです。

よこまる
上限ギリギリ派の僕でも、読めない年に攻める意味はないと思ってます。
目次

上限額を決めているのは「寄付した年」の所得

ふるさと納税は、寄付額のうち2,000円を超える部分が所得税と住民税から控除される制度です。その控除には上限があり、上限を決めているのは「寄付を実行した年の1月1日から12月31日までの所得」。去年の所得ではありません。ここが、多くの人の計算がずれる出発点になっています。

控除は三段構えで、上限を握っているのは住民税の特例分

総務省が示している控除の仕組みは、次の三つの合計です。

  • 所得税分:(ふるさと納税額 − 2,000円)× 所得税の税率
  • 住民税の基本分:(ふるさと納税額 − 2,000円)× 10%
  • 住民税の特例分:(ふるさと納税額 − 2,000円)×(100% − 10% − 所得税の税率)

このうち上限を握っているのが三つ目の特例分で、住民税所得割額の20%が天井として設定されています。つまり、ふるさと納税で実質2,000円負担に収まる金額は、その年の住民税所得割額によって決まる。住民税所得割はその年の所得から計算されるものなので、結果として「今年いくら稼いだか」が上限額を決める、という構造です。

自分でおおよその上限額を出したいときは、次の式が使えます。

上限額の目安 = 住民税所得割額 × 20% ÷(100% − 10% − 所得税率 × 1.021)+ 2,000円

※1.021は復興特別所得税分の上乗せ(2026年時点)

ただし住民税所得割額そのものが今年の所得で決まるため、年の途中では確定しません。だから各サイトのシミュレーターは、直近で確定している数字=去年の源泉徴収票を入力させる作りになっています。

「去年の紙で計算する」のは、責められる話ではない

ここで一つ確認しておきたいのは、去年の源泉徴収票で計算している人が間違っているわけではない、ということです。よこまるはこの点についてこう言っています。

そんなもんじゃないの? みんなお金のことばかり考えてるわけじゃない。それに各サイトの試算ツールがそうなってるよね。みんな自分が今年いくら稼ぐ予定かなんて考えないよ。そっちの世界線の方が普通

制度の建て付けとツールの作りが、そもそも「去年の紙」を入り口にしている。年収が例年どおりなら、それで実務上まったく問題ありません。問題になるのは、年収が動いた年だけ。逆に言えば、年収が動いた年だけ、去年の紙をいったん脇に置けばいいという話です。

年収が動いた年、上限額はどう動くか

年収が変わる原因はいくつかありますが、上限額への効き方はそれぞれ違います。特に見落とされやすいのは、「収入は入ってきたのに上限額は増えない」パターンです。

パターン別・上限額の動き方と落とし穴

今年あったこと上限額の動き見落としやすい点
昇給・昇進した増える去年の紙で計算すると枠を余らせる。損はしないが取りこぼし
転職した(空白なし・年収アップ)増える前職と現職の合算が今年の所得。前職の源泉徴収票が必要
転職した(空白あり・年収ダウン)減る無職期間の分だけ所得が落ちる。去年基準だと超過しやすい
副業を始めた増える(副業が黒字なら)確定申告が必要になり、ワンストップ特例が使えなくなる
産休・育休に入った大きく減る(ゼロのことも)出産手当金・育児休業給付金は非課税。所得に入らない
育休から復帰した復帰した月数しだい年の途中復帰なら、今年の年収は例年よりかなり低い
退職して再就職しなかった減る退職金(一時金)は枠を増やさない。詳細は下記
独立・開業した年内は読めない事業所得が固まるのは年明け。12月まで引っ張るのが安全

この表で最も自己負担が膨らみやすいのが、産休・育休に入った年です。出産手当金も育児休業給付金も非課税の給付なので、家計に現金は入ってきていても、税務上の所得としてはゼロ。去年フルタイムで働いていた前提の上限額で寄付すると、超過分がまるごと自腹になります。

退職金は、ふるさと納税の枠を増やさない

退職した年に特に注意したいのが、退職金の扱いです。まとまった金額が振り込まれるので「今年は所得が多いから枠も大きいはず」と考えたくなりますが、これは逆です。

退職金を一時金で受け取った場合、その退職所得は現年分離課税という特別な扱いになります。支給時に住民税が天引きされて完結するため、ふるさと納税の上限計算のベースになる住民税所得割額には含まれません。つまり、退職金をいくら受け取っても、ふるさと納税の枠は1円も増えないということです。

一方で、退職金を年金形式で分割して受け取る場合は、公的年金等と同じ雑所得として総合課税の対象になります。この場合は他の所得と合算されるため、上限額にも反映されます。受け取り方によって扱いが変わる、という点だけは押さえておきたいところです。

よこまる
退職金で枠が増えると思って寄付すると、まあまあ痛い目に遭います。

読めない年は「確実な分だけ」。上振れは狙わない

では、収入が読めない年はどう振る舞うのが正解か。冒頭に置いたよこまるの答えがここに効いてきます。「確実にこの分は上限額として大丈夫だなぁ、っていう部分だけをやればいい」。

期待値で考えると、上振れを狙う理由がない

この判断の背景にあるのは、損得の非対称性です。上限内に収まっている寄付で得られるのは、寄付額のおおむね3割相当の返礼品。一方、上限を超えた部分は控除がまったく効かず、全額が自己負担になります。10万円分の枠を余らせたときに逃すのは3万円相当の返礼品ですが、10万円分を超過したときに失うのは10万円そのものです。

取れるリターンが3割で、外したときの損失が10割。この形をしている以上、読めない年に上限ギリギリを攻める合理性はありません。上限ギリギリまで使う派のよこまるが「リスクなんて取る必要ない」と言うのは、ふるさと納税に消極的になったからではなく、期待値が合わないからです。年収が安定している年は上限まで使い切る、動いた年は確実な下限で止める。どちらも同じ物差しで判断しています。

年末まで引っ張って、確定してから寄付する

もう一つ有効なのが、単純に判断を後ろへ倒す方法です。ふるさと納税は12月31日までの寄付がその年の対象になります(決済完了日ベース。自治体やサイトによって年内受付の締切が早まるため要確認)。11月から12月にかけては、その年の給与がほぼ見えている時期。賞与も確定し、副業の売上も概ね固まっています。

年収が動いた年は、春や夏に見切り発車せず、数字が固まる11〜12月まで待ってから一気に寄付する。これだけで「読めない」という前提そのものが消えます。急いで寄付して得することは、制度上ひとつもありません。

年末に一気に寄付する前提なら、寄付先を探す時間だけ先に取っておくと当日が楽になります。控除の扱いはどの窓口を使っても同じなので、普段使っている経済圏に寄せるのが手間が少ない選び方です。楽天ふるさと納税(PR)やau PAYふるさと納税(PR)は決済がそのままつながりますし、生産者から直接届くポケマルふるさと納税(PR)のような選び方もあります。なお2025年10月以降、仲介サイト側が寄付に対してポイントを付与することは禁止されています(決済手段そのもののポイント還元は対象外)。

よこまる
引っ張れるなら12月まで引っ張る。急いで得することが何もない。

年収が動いた年は、ワンストップ特例が壊れやすい

上限額と並んでもう一つ崩れやすいのが、ワンストップ特例です。年収が動いた年は、そもそもワンストップが使えなくなるケースが多くなります。

確定申告をすると、ワンストップの申請は無効になる

ワンストップ特例が使えるのは、その年の寄付先が5自治体以内で、確定申告をする必要のない給与所得者などに限られます。申請書は寄付ごとに提出し、寄付した翌年の1月10日必着です。

問題は、後から確定申告をした場合。ワンストップ特例の申請はすべて無効になります。年収が動いた年は、副業所得が20万円を超えた、年の途中で退職して年末調整を受けていない、医療費控除を使う、といった理由で確定申告が必要になりがちです。その場合は、ワンストップの申請書を出していたとしても、確定申告書のほうにすべての寄付を寄附金控除として記載し直す必要があります。書き漏らすと、その分の控除は丸ごと受けられません。

住宅ローン控除の1年目と重なる年は特に注意

住宅を購入した年も「年収が動いた年」と同じ注意が要ります。住宅ローン控除の適用1年目は確定申告が必須なので、ワンストップ特例は使えません。

さらに、確定申告でふるさと納税を申告すると、控除の一部が所得税から差し引かれる形になります。住宅ローン控除も所得税から差し引く制度なので、所得税額が小さい人ほど、両方を使い切れずに一部が取りこぼされる可能性があります。この年だけは、上限額を保守的に見ておくほうが安全です。

2026年以降の制度変更も、頭の片隅に

直近では、2026年10月から自治体が制度の指定を受けるための基準が見直され、返礼品の地場産品基準や自治体の経費割合のルールが変わる予定です。さらに2027年の寄付分からは、合計所得金額が4,000万円を超える層について、住民税特例分の控除額に193万円の上限が設けられます。いずれも大多数の会社員の上限額計算には影響しませんが、返礼品のラインナップは今後変わっていく可能性があります。

まとめ:上限計算は「お金の練習」になるか

最後に、よこまるがずっと言い続けている「自分がどれだけ稼いで、どれぐらい控除されているかは知っておいたほうがいい」という持論と、この話をつなげておきます。ふるさと納税の上限計算は、その練習になるのか。本人の答えは、こうでした。

ありだと思います。ただやっぱりそれより何より確定申告をするところの方が、ほど良い練習になるかなと思います。ふるさと納税は上限額の計算が結構ややこしいので、多分練習としては嫌になってしまって向かないかなと思います。

ここまで読んでいただければ分かるとおり、上限額の計算は住民税所得割・所得税率・分離課税・非課税給付が入り混じった、なかなか面倒な世界です。入門編にするには難しすぎる。自分の稼ぎと控除を把握したいなら、素直に確定申告を一度やってみるほうが早い、という結論です。年収が動いた年は、その確定申告が必要になる年でもあります。せっかくなら、上限額の答え合わせと一緒に済ませてしまうのが効率的かもしれません。

※本記事は執筆時点の情報にもとづきます。税制・制度は変わることがあるので、最新は国税庁等の公式情報でご確認ください。一般的な情報提供であり、個別の税務相談ではありません。控除上限額は目安であり、正確な金額は各自の状況に応じたシミュレーションでご確認ください。

ここまで読んでくれて、ありがとうございます。ふだん何を考えているかは、note に書いています。
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note には、仕事やキャリアの考えごとを書いています

公認会計士・税理士として実務で見ていること、キャリアで迷ったこと、お金との距離感。答えの出ていない話も含めて置いています。

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公認会計士・税理士。IPO準備企業で、経営に近い場所にいます。仕事は数字を扱うことですが、いちばん興味があるのは「人がどう働いて、どう暮らすか」。お金・税務・AI・キャリア、そして日々のことを、一般論として、自分の頭で考えた分だけ書いています。ここに書いているのは、個人としての見解です。
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公認会計士・税理士。IPO準備企業で、経営に近い場所にいます。仕事は数字を扱うことですが、いちばん興味があるのは「人がどう働いて、どう暮らすか」。お金・税務・AI・キャリア、そして日々のことを、一般論として、自分の頭で考えた分だけ書いています。ここに書いているのは、個人としての見解です。

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