2026年10月から、国民年金の第1号被保険者にも「育児期間の保険料免除」が入りました。会社員だけにあった育休中の免除が、ようやくフリーランス側にも届いた形です。僕はこの穴埋めそのものはいい改正だと思っています。そもそも就労の形によって扱いが変わるべきではない、と前から思っていたので。ただし、この制度は黙って始まるわけではありません。何が免除され、誰が届け出る必要があるのかを、一次情報から整理します。
2026年10月に始まったのは「第1号被保険者」の育児免除
日本年金機構が案内しているのは、子を養育する国民年金第1号被保険者について、その子が1歳になるまでの期間の国民年金保険料の納付が免除される制度です。2026(令和8)年10月に始まりました。第1号被保険者は、20歳以上60歳未満の自営業者・農業者・学生・無職の人などが該当します。
令和8年度の国民年金保険料は月額17,920円。12か月分なら215,040円、13か月分なら232,960円です。免除された期間は「保険料を納付したもの」として老齢基礎年金の受給額に反映されるので、年金額を削らずに保険料がゼロになる、という設計になっています。
対象は実父母・養父母。要件は2つだけで、所得は見られない
対象は、1歳になるまでの子を養育する第1号被保険者の実父母・養父母です。満たすべき養育の要件は次の2つだけで、所得要件はありません。
- 子と親子関係があること
- 子と同一住所であること
ここでいう子には、法律上の親子関係がある子(実子および養子)に加えて、特別養子縁組の監護期間にある子、養子縁組里親に委託されている子も含まれます。育児休業を取っている必要もありません。第1号被保険者であれば、夫婦ともに対象になります。
よこまる
会社員の育休中免除とは別の制度。第3号と任意加入は対象外
混ざりやすいので線を引いておきます。会社員や公務員などの第2号被保険者には、以前から産前産後休業・育児休業等の期間について厚生年金保険料等が免除される仕組みがあり、今回の育児免除はそれとは別の制度です。
そして、第2号被保険者に扶養されている配偶者(第3号被保険者)と、任意加入被保険者は、この育児免除の対象ではありません。第3号被保険者はもともと自分で国民年金保険料を納めていないため、免除する保険料がない、という整理です。
免除される期間は、実母と実父・養父母で数え方が違う
ここが一番間違えやすいところです。同じ子を育てていても、産前産後免除があるかどうかで起点が変わります。
実母:産前産後免除に引き続く9か月
産前産後免除期間を有する実母の場合、産前産後免除期間に引き続く9か月間が免除されます(2026年10月1日以降に限る)。産前産後免除は4か月または6か月なので、通算すると最大13か月になります。
機構の例では、子の出産(予定)日が令和9年5月1日なら、令和9年8月から令和10年4月までの9か月間が育児免除期間です。
実父・養父母:養育開始の月から1歳の誕生日の前月まで最大12か月
実父または養父母(産前産後免除期間を有しない実母を含む)の場合は、子を養育することとなった日の属する月から、1歳になる誕生日の前月までの最大12か月間です。出産日が令和9年5月1日なら、令和9年5月から令和10年4月までの12か月間が対象になります。
2026年10月より前から育てている場合は、10月以降の月分だけ
施行前から子を養育していて、施行時点で子が1歳未満のケースは、2026年10月1日以降の月分だけが免除されます。機構の例では、出産日が令和8年1月1日の場合、実母・実父いずれも令和8年10月から12月までの3か月間が対象です。さかのぼって全部免除、にはなりません。
よこまる
いま納めている人・猶予中の人は、どう扱われるか
この制度のいいところは、すでに別の状態にある期間も、届け出れば育児免除期間として扱われる点です。納付済みの保険料は充当または還付されます。状態別に整理すると、こうなります。
| いまの状態 | 届け出るとどうなるか | 年金額への反映 |
|---|---|---|
| 保険料を納付済み | 育児免除期間として扱われ、納めた保険料は充当または還付 | 満額のまま |
| 未納 | 育児免除期間になる | 満額に変わる |
| 法定免除に該当 | 育児免除期間として扱われる | 満額に変わる |
| 免除・納付猶予が承認済み | 育児免除期間として扱われる | 納付猶予は反映なし → 満額に変わる |
| 学生納付特例が承認済み | 育児免除期間として扱われる | 反映なし → 満額に変わる |
| 付加保険料を納付中 | 育児免除期間中も納付を続けられる | 上乗せは維持 |
猶予や学生納付特例からの切り替えは、年金額の意味が変わる
表のなかで効き方がいちばん大きいのが、納付猶予と学生納付特例です。この2つは老齢基礎年金の受給資格期間にはカウントされますが、年金額には反映されません。一方、育児免除期間は保険料を納付したものとして年金額に反映されます。
つまり、すでに猶予や学生納付特例が通っているからといって「どちらでも同じ」ではありません。同じ月を育児免除に切り替えられるなら、将来の年金額の側で差が出ます。追納を考える前に、まずこちらを確認するほうが順番として早い。
付加保険料は免除中も納められる
月額400円の付加保険料は、育児免除期間中も納付できます。保険料本体は免除、上乗せは継続、という組み方ができるということです。老齢基礎年金に上乗せを作っている人は、ここを止めてしまわないようにしてください。
よこまる
自動で始まる人と、届け出ないと始まらない人
制度の中身よりも、実際に取りこぼしが出るのはここです。
届出が不要なのは、産前産後免除から続く実母の一部だけ
届出が不要なのは、産前産後免除に該当した実母で、その産前産後免除期間が2026年9月以降に終了したあと、引き続き子を養育していることを機構が確認できる場合です。確認の前提として、基礎年金番号とマイナンバーが紐づいていて、マイナンバーを用いた情報連携で親子関係と子と同一世帯であることが確認できる必要があります。該当する人には「国民年金保険料育児免除該当通知書」が届きます。
逆に、実父・養父母、および産前産後免除の届出が済んでいない実母は、手続きが必要です。育児免除に該当することが確認できなかった場合は「国民年金保険料の産前産後免除期間終了のお知らせ」が届くので、これが来たら自分で届け出る、と覚えておくのが実務的です。
マイナポータルなら、添付書類なしで出せる
届出方法は、紙と電子申請の2つです。紙の場合は、住民登録をしている市(区)役所・町村役場の国民年金担当窓口に「国民年金産前産後免除該当届/育児免除該当・終了届」を提出します。郵送も可能です。電子申請の場合は、スマートフォンからマイナポータルで提出できます。
添付書類は、思っているより軽いです。マイナンバーまたは基礎年金番号を確認できる書類は電子申請なら添付不要。親子関係を確認できる書類(戸籍謄抄本など)と、子と同一住所であることを確認できる書類(住民票)は、原則として添付不要とされています(急ぎの場合に添付を求められる形)。外国籍の場合や、特別養子縁組の監護期間・里親委託のケースでは、別途証明書の添付が必要です。
届出の時期は「要件を満たした日以降、速やかに」。産前産後免除とあわせて届け出ることもできます。
前納している人と、途中で要件を外れた人の注意点
口座振替またはクレジットカード納付で前納している場合、育児免除期間が終わったあとに振替方法が変更となることがあります。心配な人は年金事務所に確認してください。
また、育児免除期間中に要件を満たさなくなった場合(子と同居しなくなった場合など)は、終了の届出が必要です。子が1歳に到達して期間満了となる場合は、手続きは要りません。
免除されると、確定申告の社会保険料控除は減る
見落とされがちな裏側の話をひとつ。納付した国民年金保険料は、所得税・住民税の計算上、全額が社会保険料控除の対象になります。ということは、免除された月の保険料は納めていないので、その分の社会保険料控除もありません。
手元のキャッシュは最大で12か月分の215,040円(実母で13か月なら232,960円)ぶん軽くなりますが、その分、年末の所得控除の額は前年より小さくなります。所得が同じでも税額は前年と同じにはならない、ということです。免除で浮いた分をそのまま使い切る前提で資金計画を立てていると、確定申告のときに想定とずれます。小規模企業共済やiDeCoで所得控除を組んでいる人は、その年の控除の総額を一度見直しておくと安全です。
控除証明書の集計や前年との比較は、クラウド会計を使っている人なら数字を並べるだけで済みます。これから開業届を出す人・まだ手集計の人は、マネーフォワード クラウド確定申告(PR)やfreee会計(PR)のように社会保険料控除まで一緒に管理できるものを入れておくと、こういう年の比較が楽になります。
まとめ:穴は埋まった。残っているのは「知っているか」だけ
制度としては、就労の形で扱いが変わる穴がひとつ埋まりました。一方で、これが自動で始まる必要はないと僕は思っています。申請しないと来ない構造そのものを責めてもしょうがない。取りこぼすのは制度のせいというより、自分のお金の状況を把握していないからです。
そこを全部すくい上げる前提で設計しても、差は埋まらないと思っています。情報を取りに行く人と行かない人の差は、すくい上げる側を厚くしても消えません。生死に関わるものは別ですが、それ以外は、知って出す側に回るほうが早い。だから国には、制度を複雑にするよりマイナポータルの周知をもっと頑張ってほしい、というのが僕の希望です。出口が整っているなら、あとは知っているかどうかの話になります。
最後に、個人で子育てをしながら働いている人へ。個人で働いていても会社で働いていても、社会を豊かにできる方向に仕事を頑張れたらいいと思っています。今後を担う世代を、一緒に育てましょう。一緒に頑張りましょう。
出典:日本年金機構「国民年金保険料の育児免除制度」(2026年10月1日更新)/同「国民年金保険料」(令和8年度 月額17,920円)/同「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」
※本記事は執筆時点の情報にもとづきます。税制・制度は変わることがあるので、最新は国税庁等の公式情報でご確認ください。一般的な情報提供であり、個別の税務相談ではありません。
note には、仕事やキャリアの考えごとを書いています
公認会計士・税理士として実務で見ていること、キャリアで迷ったこと、お金との距離感。答えの出ていない話も含めて置いています。

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