2026年度税制改正で、いわゆる「年収の壁」が103万円から178万円に拡大しました。この変更は確かに大きなニュースですが、「全部の壁がなくなった」わけではありません。実態を正確に理解していないと、予期せぬ働き損が発生するリスクがあります。
「年収の壁」は1つじゃない──3つの壁を整理する
「年収の壁」という言葉は複数の制度を指します。それぞれが独立したルールです。
| 壁の種類 | 金額 | 2026年の変更 | 影響 |
|---|---|---|---|
| 所得税の基礎控除 | 103万円 → 178万円 | ✅ 拡大(2026年12月年末調整から反映) | 扶養控除の適用範囲が拡大、手取りが増える |
| 社会保険の壁① | 106万円(一定規模の会社) | ❌ 変更なし | 勤め先規模によって社会保険加入義務が発生 |
| 社会保険の壁② | 130万円(扶養上限) | ❌ 変更なし | 超えると扶養から外れ、自分で社会保険料を払う |
178万円まで働いても、130万円を超えた時点で社会保険の扶養から外れます。社会保険料(健康保険+厚生年金)は年収の約15〜16%。収入増加分より社保負担が大きくなる「逆転現象」が起きる可能性があります。
178万円の壁が変わったことで何が変わる?
今回の改正(基礎控除の引き上げ)で実際に変わるのは、配偶者控除・扶養控除の適用上限です。
これまで「103万円を超えると配偶者控除が使えなくなる」と気にしていた方は、178万円まで上限が広がりました。ただし、この変更が手取りに反映されるのは2026年12月の年末調整が初回です(月々の源泉徴収は随時見直しが必要)。
130万円の壁を超えたらどうなる?シミュレーション
社会保険の扶養(130万円の壁)を超えた場合の影響を試算します。
| 年収 | 社会保険 | 手取り(概算) | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 129万円 | 扶養内(保険料0円) | 約129万円 | − |
| 131万円 | 扶養外(年約20万円負担) | 約111万円 | 手取りが減る可能性あり |
| 150万円 | 扶養外(年約23万円負担) | 約127万円 | 129万時とほぼ同水準 |
| 160万円超 | 扶養外 | 約135万円〜 | ここから手取りが増え始める |
上の表から分かるように、年収131〜155万円あたりが「損しやすいゾーン」です。社会保険料の負担が収入増加分を上回ってしまいます。
2026年、パート・扶養で働く人が今やるべきこと
- 勤務先の規模を確認:従業員51人以上の会社に勤める場合、106万円で社会保険加入義務が生じる場合あり
- 年収を試算して戦略を立てる:130万円前後で調整するか、160万円超を目指すかを決める
- 年末調整の書類を見直す:配偶者控除等申告書の記載内容を確認・更新する
- 配偶者(主たる稼ぎ手)の年収も確認:配偶者控除は「もらう側」の収入によって控除額が変わる
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務アドバイスではありません。申告内容については管轄の税務署または税理士にご確認ください。
※ 本記事は2026年7月時点の情報をもとに作成しています。税制・制度は変更される可能性があります。最新情報は国税庁ホームページ等でご確認ください。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談を提供するものではありません。
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公認会計士・税理士として実務で見ていること、キャリアで迷ったこと、お金との距離感。答えの出ていない話も含めて置いています。


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